松竹芸能に所属するタレントの森脇健児さん。赤坂の坂を駆けのぼるイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は日本アカデミー賞会員の顔を持ち、年間100本以上の映画を見るほどの映画好き。
そんな森脇健児さんが「裏切られるたびに気持ちがいいドラマ」と口にした『Lupin/ルパン』。2021年1月にシーズン1が公開されると、各国でTOP10入り。2023年10月にはシーズン3が配信され、さらに注目を浴びている本作の魅力を語っていただきました。
※本記事にはNetflixシリーズ『Lupin/ルパン』のネタバレを含みます。
『Lupin/ルパン』とは
セネガルからフランスへ移住してきた主人公のアサンとその父親・ババカール。大富豪であるペレグリニ家の運転手として働いていた父だが、ペレグリニ家の家宝「王妃の首飾り」を盗んだ容疑で投獄されてしまう。真面目に働いていたのにこの仕打ちを受けた父は、失意のうちに獄中で自殺してしまった。
25年の時が経って大人になったアサンは、「王妃の首飾り」が見つかったという噂を聞きつける。父親から生前に贈られた怪盗アルセーヌ・ルパンの小説に触発されて、泥棒や変装技術などを磨いてきたアサンのペレグリニ家への復讐劇が、今、始まる。
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悪人だけど悪人じゃない紳士なアサン
ーー『Lupin/ルパン』を観たとき、どんな印象でしたか?
中学生の頃、アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』が大好きだったんです。大泥棒なのにどこか気持ちがいい主人公に当時憧れて。
『Lupin/ルパン』は『ルパン三世』とはまったく関係がないんですけど、大泥棒なのに分かりやすく腹の立つ悪人と戦っていくというストーリー性が、『カリオストロの城』と似ている。当時のキラキラした気持ちがよみがえってきて、すぐにハマってしまいましたね。
観ていくうちに感じたのが、トリックの素晴らしさ。そして家族愛や友情関係の描き方が美しい。そして誰も傷つけないそんなアサンの優しさに惚れてしまいます。
ーー主人公・アサンの魅力は何ですか?
繰り返しになりますが、やっぱり人を傷つけないところ。アサンは悪人ではあるんですが、そのクールなトリックと世間的な悪者との対決で大衆を味方にしていきます。でも警察は捕まえなければならない、でもフランスの大衆はアサンの活躍に期待する……。そういう意味では『ルパン三世』に似ているような気がしますね。
ーーアサンのファンになっちゃうんですね。
そうなんですよ。話が進むと、絵に描いたような悪代官が出てくるわけですよ。それが父親を死に追いやったペレグリニ家の当主。「何としてもこいつを警察に捕まえさせてやろう」と思うアサン。でも、そんな簡単に悪代官も捕まりません。途中まで一緒に行動していたやつが、「えっ、お前も悪代官の部下やったん!?」と巧妙に捕まらないように逃げるんですよ。それでも自分で裁こうとせずに、しっかり法の裁きを受けさせるアサンのその姿勢が紳士的であり、痛快でいいんです。
全部を裏切る巧妙なトリック
ーーこの作品のおすすめポイントを教えてください。
とにかく大がかりなトリックが魅力ですね。「どうやってこの宝石を盗むのか」「収監された刑務所からどうやって脱獄するのか」。その全部が、森脇健児の想像をはるかに超えて、良いように裏切ってくれるんです。
実はこれ、アルセーヌ・ルパンの原作小説に出てくるトリックを、アサンが再現しているんです。アサンにとってモーリス・ルブランによる小説本は父親からもらった大切なもの。度々、小説の話が入ってくるんですけど、その時の登場人物の名前も要チェックです。アサンがぽつりと、小説に出てくる登場人物の名前を呼ぶんです。「分かるやつなら分かるやろ」って、ヒントも出してくれるんですよね。
ーー印象的なシーンはありますか。
絶対に盗めないとある宝石をアサンが盗む時に、新聞社に犯行予告を出すんです。そうするとニュースになりますよね。警察も意地になって警備を強化します。そんな厳重な警備のなか、「これどうやって盗むんだ」と思うわけですよ。するとアサンの覆面を着けた大衆が押し寄せてくるんです。そう、アサンのファンです。大衆も「どんな風にこの宝石を盗むんだ」と期待しているんです。そして犯行予告のカウントダウンが鳴り響く。カウントが0になると辺りに非常ベルの音が鳴り響きます。大衆はアサンが来たと大盛り上がり。警察も警戒レベルを上げていく……。
観ている僕らもボルテージは最高潮ですよ。「どうなる、どうなる」って思ってたら、あっけなく捕まるんですよ。「えっ!」って。でも捕まるのも実はトリックなんです。
これは観た人にしか分からないと思いますが、どのトリックも本当に気持ちいいくらいに騙されるんですよ。もう騙されるのが快感になるくらい(笑)。でもちゃんとネタバラシもしてくれるから、モヤモヤせずにすっきりと観られるんです。
ーー気づかれないように巧妙に伏線が張られているんですね。
そうなんですよ。この『Lupin/ルパン』は、何気ないシーンも見逃してはいけません。スマホに届くメッセージの内容、登場人物の目線の動き、画面に映りこむ車の影……。そういう細かいシーンが伏線になっているんです。だから瞬き厳禁。
あとは脇役の使い方がうまいですね。最初はただの脇役なんですけど、途中から重要人物に変わっていくんです。それが敵なのか、味方なのか。絶対に見分けがつかないからこそ見続けてしまうんです。
僕は映画が好きで、年間100本以上は見に行くんです。でも映画って1時間30分から2時間くらいで終わりますよね。だから脇役の深堀りってなかなかできないものなんですよ。でも『Lupin/ルパン』はドラマなのでもっと長い。その中で、脇役含めて登場人物一人ひとりの物語を過去シーンを挟みつつ丁寧に描いてくれるんです。そんな風に『Lupin/ルパン』のストーリーがどんどん分厚くなって、沼にハマっていくんです。
ーー「真相が知りたい」って思うからこそ見続けてしまうんですね。
そうなんです。でもするとちょっと慣れてきて、パターンが予想できるようになるんですよね。「ちょっとやそっとでこの男は捕まらないだろう」とか「どうにかして解決するやろ」とか。でもね……、死ぬのよ……、この男。医者が死亡診断書を書くんです。そして葬式して、土に埋められて、「次のエピソード」へ……。いやいや、続けられへんよ。寝られへんやろ、って。でも……まぁこの後は作品を観て確かめてください(笑)。
映画やドラマにハマれる入口の作品
ーー『Lupin/ルパン』はパート3が2023年10月に公開されましたね。
むちゃくちゃ楽しみにしていました。パート3では、随分前から振っていた伏線であるアサンのお母様がキモになってきます。実はこのお母様がめちゃくちゃやり手。アサンはこのDNAだったんだなと納得させられるほどですね。だからパート1とパート2を観直してから挑む方がいいかもしれないですね。
ーー『 Lupin/ルパン』パート3の魅力を教えてください。
パート3は、パート1やパート2と違って、しっかりと物語をみせてくれていると感じました。これまでは展開が早くて、ジェットコースターのように激しいアップダウンで楽しませてくれる作品。でもパート3はじっくりとした流れ。だからこそより『Lupin/ルパン』の世界観に浸れるシーズンになっていると思います。
やっぱり監督や脚本家も僕らがハマってるのを分かってるんでしょうね。だから展開を変えて我々を飽きさせないようにしてくれてる。それがまた心地いいんですよね。
ーーパート3の印象はいかがですか?
まだ終わらないのか、そのひと言につきます(笑)。パート3の最後にスゴイ伏線を張って、終わっていくんですよ。それが『Lupin/ルパン』の魅力でもあるんですけど。
でも終わらなくて良かったとも思いますね。例えばすごく面白い小説を読んでる時って、読みたいけど終わっていくのがさみしくなるときがあるでしょ。そんな感情がこみ上げてきましたね。あの終わり方は絶対パート4がある終わり方をしているので、僕はずっと待ってますよ。
ーー最後にどんな年代に『Lupin/ルパン』を観てほしいですか?
年齢層は問わない作品だと思っています。僕が小学生の頃、『ジョーズ』や『ロッキー』、『スターウォーズ』を観て、映画にハマっていきました。名作と呼ばれる作品って老若男女問わないじゃないですか。この作品も同じようにどの年代が観ても楽しめる作品になってると思うので、大人も子供も観てほしいですね。
さらにいうと、今の小中学生にこそ観てほしいとも思います。「こういうところが面白いんだ」「こういう部分に感動する」っていうのをちゃんと教えてくれるのが『Lupin/ルパン』。だからこそこの作品で「映画やドラマって面白い」と感じて、他の映画やドラマを好きになっていってほしいなと思います。
今回の記事は「eo光チャンネル」で放送中の番組『Netflix Freaks』の連動企画。こちらの動画もご覧いただき、森脇健児さんの熱を帯びたプレゼンで作品の面白さをぜひ感じてください!
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