ナジャ・グランディーバ『ハートストッパー』シーズン2にみる“カミングアウト”の難しさ

ハートストッパー2 メインビジュアル

セクシャルマイノリティ(LGBTQ+)をテーマにした海外ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』のファン待望のシーズン2が、2023年8月3日よりNetflixで独占配信されました。

本作はイギリスの高校を舞台に、ゲイの青年・チャーリーと同級生のニックを中心に展開される青春群像劇。シーズン2では、恋人同士となったチャーリーとニックが友人や家族に自分たちの関係を公表しようとするのですが……。

同じくセクシュアル・マイノリティの当事者である、タレントでドラァグクイーンのナジャ・グランディーバさんは、悩める2人をどう見たのか。シーズン2の見どころと“カミングアウト”に関する自身の体験談を語ってもらいました。

プロフィール:ナジャ・グランディーバ

兵庫県出身。大阪在住のドラァグクイーン。
毒舌を言わない「のんびりオネエ」として、関西を中心に活動中。
『ゴゴスマ』(CBC)、『よんチャンTV』(MBS)、『バラいろダンディ』(TOKYO MX)、『ナジャ・グランディーバのチマタのハテナ』(eo光チャンネル)、『ウラのウラまで浦川です』(ABCラジオ)などの番組にレギュラー出演しているほか多数のメディアで活躍している。
『ナジャ・グランディーバのレツゴーフライデー』(MBSラジオ)が2021年の日本民間放送連盟賞【ラジオ生ワイド番組部門】にて優秀賞を受賞。

『HEARTSTOPPER ハートストッパー』シーズン2のあらすじ

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ラグビー部のニック(キット・コナー)と付き合い始めたゲイの高校生チャーリー(ジョー・ロック)。順調に交際を進める中、ニックは友人や家族にチャーリーとの関係を打ち明けたいと思い始める。かたやチャーリーは恋愛に夢中になるあまり、成績が落ち始め……。

一方、エル(ヤスミン・フィニー)が新しい学校の友達と仲良くしていることに寂しさを覚えるタオ(ウィリアム・ガオ)は告白を決意。レズビアンカップルのタラ(コリーナ・ブラウン)とダーシー(キジー・エッジェル)はあることをきっかけに気まずい雰囲気となり、それぞれがさまざまな問題に向き合うこととなる。

シーズン2はLGBTQ+への理解がより深まる

ハートストッパー2 ナジャ・グランディーバさん

ーー今回配信されたシーズン2では、どのようなストーリーが展開されるのでしょうか?

シーズン1はざっくりいうと、ニックとチャーリーが惹かれ合って付き合うまでのお話でした。シーズン2では恋人同士になった2人が、今度はそれを周りにどうカミングアウトするかという問題が出てくるんですね。そこが今回の一番の見どころかなと思います。

ーーナジャさんはそんなニックとチャーリーの恋愛を見てどう感じられましたか?

2人が恋人であることを周囲にカミングアウトしたいっていう気持ちは分からなくもないんですが、大人の私からすると、そんな無理に公表せずとも2人だけで幸せな恋愛をしてもいいんじゃないかなと思うんですね。その一方で、若い頃に私も彼氏ができてたら周りに公表したかっただろうし、今の時代にそういう恋愛ができているニックとチャーリーを羨ましく思いました。

ハートストッパー2 カミングアウトの難しさを語るナジャさん

ーー今の時代だからこそ、カミングアウトしようと思えるということでしょうか。

やっぱり、そういう部分はあると思います。もし私が30年前の20歳ぐらいの時にカミングアウトしたとしても、今よりは差別が多かったと思う。だからニックとチャーリーは時代に背中を押してもらえてるところもあると思うんですよね。LGBTQ+というものが全員ではないにしろ、なんとなく理解してもらえている中でのカミングアウトなので恵まれているとも言えるんじゃないかな。

ーーシーズン2では、LGBTQ+がどのように表現されていますか?

ハートストッパー2 シーズン2はQ+の方々にスポットライト

いわゆるLGBTQ+と呼ばれるカテゴリーの中で、シーズン1はゲイのチャーリーとバイセクシャルであるニック、ダーシーとタラのレズビアン同士の恋愛がメインで描かれていました。シーズン2はカテゴリーでいうと、Q+に当てはまる性自認を持った人たちが登場してより幅が広がったなと思います。

ーー具体的にはどのような性自認のキャラクターがシーズン2で登場するのでしょうか?

アイザックという男の子が登場するんですが、彼が自分はあまり人に対してときめいたり、恋愛感情を持たないなということに気づき始めるんですね。そんなときにエルが通う美術学校の展示会に行って、そこで別の作家の子がアセクシャル(他人に対して性的欲求を抱かない)とアロマンティック(他人に対して恋愛感情を抱かない)を表現した作品に出会うんです。そのことで「もしかしたら自分も」と思って、アセクシャルやアロマンティックに関する本を読む中でしっくりくるという流れがありました。

ハートストッパー2 チャーリーとアイザック
▲チャーリーをおんぶする本好きの青年・アイザック(トビー・ドノバン)

やっぱり今の時代、レズビアン(L)・ゲイ(G)・バイセクシャル(B)・トランスジェンダー(T)の4つに関しては理解が進んでいるけど、Q+の場合は私もそうですし、まだよく分からないという人が大半だと思うんです。そういう意味では、シーズン1のインタビューでも言ったように、このドラマはLGBTQ+を理解する上ですごく分かりやすい、初心者向けの教科書みたいな側面がありますよね。

ネットで恋愛のハウツーを調べるタオに共感!

ハートストッパー2 作品の魅力を語るナジャさん

ーー考えさせられるだけじゃなく、ドラマとしても面白い部分もたくさんありますか?

もちろんです!考えさせられる部分もたくさんあるけど、だからといって重たい話かといわれたらそうじゃない。なので、ちゃんと勉強するぞという風に構えてみるというよりは、気軽に楽しみながらこういうセクシャリティーが世の中に存在するんだっていうことを知ってもらえたらいいなと思います。

ーーナジャさんも楽しく観れましたか?

そりゃもう、楽しく拝見しましたよ。一方でちょっと後悔しながら観た部分もあります。なんで私も若い頃に恋愛しなかったんだろうなっていうのが、一番感じたことかな。2人みたいに喧嘩もして、でもやっぱりイチャイチャしてみたり、友達に悩みを打ち明けてみたり、そういうのを経験したかったなって思いましたね。

ハートストッパー2 ナジャさんが選ぶ恋愛対象はニックだそう

ーー登場人物の中でナジャさんだったら誰と恋愛してみたいですか?

それは間違いなくニックかな。見た目がタイプっていうのもあるけど、それプラス相手を思いやる気持ちや優しさに惹かれます。例えば今回のエピソードだと、彼氏のチャーリーがあまりご飯を食べれていないということにすぐ気づくんですよね。やっぱり普通の男の子だったらなかなか気づけないと思うんですよ。そこに気づける優しさを持っているニックは彼氏としてはもう最高やと思う。

ーー他にもお気に入りのシーンがあれば教えてください。

ハートストッパー2 トリ
▲実は弟思いなチャーリーの姉・トリ(ジェニー・ヴァルザー)

ニックの家族とチャーリーの家族が一緒にご飯食べるシーンがあるんですが、そこでニックのお兄さんがちょっとイケズなことをするんですよ。このお兄ちゃんっていうのが、LGBTQ+に対する理解があまりなくて、少し差別意識があるタイプなんですね。でもあるとき、ニックの部屋でチャーリーとキスしている写真を見ちゃって。それを何も知らないニックのお父さんに2人の関係がバレるような行動をそれとなく取るんですよ。

それに気づいたチャーリーのお姉さんが、ムカついたんでしょうね。あとで友達との電話で2人の悪口を言っているニックに「情けない男だな!」って言い放つんですが、観ているこちらもスカッとしたし、一番好きなシーンですね。普段はそんなに感情を表に出すようなお姉ちゃんじゃないからこそ、弟であるチャーリーを思う気持ちがより伝わってきました。

ーー共感したエピソードはありますか?

ハートストッパー2 エルとタオ
▲(左)エルとのデートのため、髪をバッサリ切ったタオ

私があまり恋愛をしてこなかったから、羨ましいと思うことはあっても共感する部分は少ないんです。ただ、エルに告白すると決めたタオが告白を成功させる方法を一生懸命ネットで調べるシーンがあるんですね。

で、その情報を元に思い切って髪を切り、服装もすごくおしゃれに決めた状態で、花束を持ってエルの目の前に現れるんですが、私も若い頃に付き合いはしなかったけど、好きな人と出かけるときに『ホットドッグ・プレス』っていう雑誌で恋愛のマニュアルを読み込んだりしてたなと思って。今はネットがあるから手段と方法は違うけど、相手に好かれるために情報収集して、その通りにした結果ようわからん格好になっているところは少し共感できましたね。

子どもにカミングアウトされる前に“もしかしたら”という意識を持ってほしい

ハートストッパー2 ニックとチャーリー
▲ニックは父親にカミングアウトするため、チャーリーとパリへ行くことに

ーー前回のインタビューでは子どもを持つ親御さんに見てほしい作品だとおっしゃっていましたが、シーズン2に関してはいかがですか?

シーズン2もその思いは変わらないですね。例えば、ニックがパリに住んでいるお父さんのところにカミングアウトするつもりでチャーリーを連れて行くシーンがあるんですけど、結局ニックは勇気が出なくて打ち明けられないんです。それを観たときに、世の中の親御さんたちには、もしかしたら自分の娘や息子がLGBTQ+のいずれかに当てはまるかもしれない、でも話したいけど話せないという境遇に置かれている可能性があることをどこかで心に留めておいてほしいなと思いました。

ハートストッパー2 ニックの父
▲パリで単身赴任中のニックの父

ーーナジャさんの場合はご両親にどうやってカミングアウトされたのでしょうか。

私の場合はずっと内緒にしてたんですが、テレビに出させていただくタイミングで「これは言わなあかんな」と思い切って両親にカミングアウトしました。最初は大反対されて、父親にも「勘当だ」って言われました。でも次の日に母親が「あんたの人生だから好きにしなさい」って言ってくれて。そこは本当にありがたいなと思うし、感謝もしています。

ただ色んな家庭があるので、世の中には言いたいけど言えない子どもがたくさんいると思うんです。だからこそ、もしかしたら……という意識を常に持って、もし息子や娘にカミングアウトされたら突き放さず、その子の個性として受け止められるような心持ちでいてほしいなと思います。

ハートストッパー2 LGBTQ+の理解が少しでも深まりますようにと伝えるナジャさん

ーーセクシュアル・マイノリティの当事者として今の世の中をどのように見ていらっしゃいますか?

現代はLGBTQ+に対する理解がどんどん深まっていて、多くの人が差別をせず理解を示してくれるような世の中になってはいるけど、やっぱり100%ではないと思います。一部には差別的な気持ちを持ってる人もいるし、差別感情はないけどLGBTQ+に関して何かと聞かれたらはっきりとは答えられない人も多いですよね。そういう部分で日本はまだ世界に遅れているところもあるので、このドラマを通じて理解を深めてくれる人が少しでも増えたらいいなと思っています。

今回の記事は「eo光チャンネル」で放送中の番組『Netflix Freaks』の連動企画。こちらの動画もぜひご覧ください!ナジャさんの語り口でより一層『ハートストッパー』の魅力が伝わってくるはず。

【Netflixシリーズ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』シーズン2 独占配信中】


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