『スプリガン』は、1989年〜1996年にかけて『週刊少年サンデー』で連載されていた、たかしげ宙氏(原作)・皆川亮二氏のスーパー伝奇SFアクション漫画。およそ30年前の『スプリガン』がNetflixのアニメーションシリーズとして蘇ると聞いて、胸にわき起こったのは「なぜ今ごろ?」ではなく「Netflix、よく分かってる!」でした。
なぜなら『スプリガン』は今こそアニメ化すべきであり、それはNetflixしかできないことだからです。
『スプリガン』のあらすじ。80~90年代のエンタメ要素てんこ盛り
かつて地球には優れた文明が存在しており、現代では到底およびも付かない知識や科学力を持っていた超古代人の遺産が世界各地で人知れず眠っているという。その遺産を大国の軍部が奪い合う中で、封印しようと活動する組織があった。その組織の特殊工作員を『スプリガン』と呼ぶ……。
原作の設定は、ざっとこんな感じです。
つまり、何でもあり。超古代人の遺産にはオーパーツ(時代を超越した出土品)もあれば遺跡もあり、超科学の技術もあれば、科学を超えたオカルトもあり。より正確には「1980年〜1990年代のハリウッド発アクション映画で観たもの」がぜんぶ入り、という趣きなのです。
遺跡を冒険したり殺人ロボットと戦ったり、知恵と勇気で超常現象に立ち向かったり、あの頃のエンタメ要素が1つの作品で楽しめる贅沢さ。ちょうど『トップガン マーヴェリック』、すなわち1986年の『トップガン』から36年ぶりの続編が大ヒットしている最中で、数奇な縁を感じてしまったものです。
なぜ『スプリガン』のアニメ化は難しいのか?
これほど面白いマンガなのに、『スプリガン』は今まで1度しかアニメ化されたことがありません。その「1度」である1998年の劇場版こそが至高の作品だったりするのですが、『AKIRA』の大友克洋氏が総監修、『鉄コン筋クリート』などのStudio 4℃が制作という豪華な布陣そのものが『スプリガン』の「映像化のハードルの高さ」を示している感もあります。
なぜ『スプリガン』のアニメ化が難しそうかといえば、まさに冒険や戦いの舞台がバリエーション豊かすぎるからです。主人公の御神苗優(おみなえゆう)は超古代文明の遺産があるところなら、古代遺跡から密林、秘密研究所までどこにでも飛んでいきます。そこでは100%の確率で激しいバトルが繰り広げられ、銃弾どころか大爆発が相次ぎ、ほとんどが跡形も残りません。
これはアニメの作り手側から見れば、せっかく作り込んだ背景美術もたった1回しか使えず、1話ごとに作り直しということです。毎回、同じ背景が使える「日常アニメ」とは正反対の「非日常アニメ」であり、何話か作るには並々ならぬ労力がかかるはず。
だから劇場アニメしか実現していなかったのに、よくNetflixは「アニメシリーズ」に踏み切ったなあ……と驚いたのです。さらなる驚きは、全6話(これが限界でしょう)を通して、ちゃんと「やりきっている」ということです。
手描き作画と3DCGの巧みな使い分け
今回のアニメシリーズを特徴付けているのは公式サイトで謳われているように「2D作画と3DCGを駆使」したアプローチでしょう。このやり方は、各話45分(話数により増減あり)×6本ものボリュームをやり遂げるためには、おそらく唯一の方法だったと思います。
手書きの2Dアニメーションの方がきめ細やかな表現に向いていることは、言うまでもありません。が、「スプリガン」は全編がどこもかしこも、リッチな物量また物量です。
単純にアクションの量も一般的なテレビアニメと比べて並外れていますし、また戦場では敵も味方も大人数のぶつかり合いであり、巨大なメカニックによる戦闘シーンも多い。さらに古代の防衛システムに操られた石像らが押し寄せてきたり……と、どれほど作画スタッフがいても追いつかないほどの物量があふれています。
そこで本作は、アクションや情報量が多い部分は3DCGかつモーションキャプチャーで動かし、動きの少ないシーンは手描きで作画、という基本方針をとっているようです。大勢の一般キャラやメカを人力で描くのではなく、3DCGのキャラクターを配置して、役者さんにセンサーを付けて取得したデータにより動きを付ける、という具合です。
この3DCGは、主人公の着るAMスーツ(アーマードマッスルスーツ)、強化服でも大活躍しています。なにしろ銃弾をかわし、強化服を着た敵とのバトルでは息を飲むスピードを発揮。それを一瞬も途切れない“動き”としてアニメで見せていくことは、もしも手描きであれば、制作に数年をかけられる劇場アニメでなければ無理でしょう。3DCGのおかげで、『スプリガン』ファンは今こうして映像を楽しむことができているのです。
またAMスーツは御神苗優にも並ぶ、もう1つの“主人公”とも言えます。人智を超えた強大なクリーチャー、あるいは超人じみた複数の強敵らとのハンディマッチは、ハリウッド映画であればいろいろな策を講じ、奇跡のような幸運に助けられてようやく戦い抜けるものです。
そうした諸々のピンチを、すべて「知恵と勇気とアクション」で切り抜ける手がかりこそがAMスーツだったりします。
たとえば超音波により脳を破壊できる能力者には、超スピードの接近によるドップラー効果(観測者が移動することで周波数が変化する)で対抗する。またガス状で物理攻撃が効かない怨霊には、精神波を手のひらに集約するサイコブローにより立ち向かう。「なんでも力でねじ伏せる」のは脳筋といえば脳筋ですが、しっかり設定の裏付けがあるため、気持ちよく観ていられます。
もっとも、敵も同等のAMスーツを着ているため、主人公は「道具に頼っている」わけではありません。どの決着も、最後は紙一重の差や戦闘センスの違いによるため、勝利の後味も爽やかです。
こうして手描きと3DCGを巧みに使い分けてはいますが、あくまで「基本的には」に過ぎません。『スプリガン』には強化服を着ていない最強の達人や、普通の服装を着た魅力的なヒロインたちも多いためか、実は「動きの豊かなシーンで手描き」もかなりあるように思われます。そこは省力化せず、丁寧に作画していることに、スタッフの誠実さが垣間見えるのです。
1話完結が大きな魅力、でもシーズン2が観たい!!
1分1秒ごとに濃密な情報量が楽しめる『スプリガン』ですが、「1話完結で、頭空っぽにして観られる」ことも大きな魅力です。
第1話の「炎蛇」はエピソード全体のなかで重大な位置づけではありますが、それを観なくとも、ないし話をキレイに忘れていても、第2話の「ノアの方舟」を楽しむ上で全く問題はありません。
第3話の『帰らずの森』は不死の秘薬に魅入られた人々の情念が呪いとなり、第4話の『狂戦士』は超古代の殺人ロボットに非力な人間が立ち向かう(わりに「メガトンキック!」を放ったりするのですが)。そして第5話ではナチス・オカルト・オーパーツという超王道の展開に。
そして1話ごとにヒロインが出るものの、あまり人間関係は後の話数に引き継がれていません。おかげで、まるで6本分の大作アクション映画を観たような満足感に浸れながらも、胃もたれがないのです。
とはいえ、それぞれのキャラクターには奥深い魅力があり、たった1話だけの出演ではもったいなさ過ぎます。ぜひとも『スプリガン』シーズン2を実現し、彼らのさらなる活躍を見せてもらいたいところです。
そんな『スプリガン』、ぜひチェックしてみてください。
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