Netflix『アドレセンス』すべての親に観てほしい、少年犯罪が題材の傑作ドラマ

Netflix『アドレセンス』すべての親に観てほしい、少年犯罪が題材の傑作ドラマ

2025年3月13日からNetflixで独占配信中の『アドレセンス』は配信から11日間で6,630万回とリミテッドシリーズ(1シーズン完結)で歴代1位の視聴数、その後4週間でNetflix史上でも4番目に視聴されたドラマになりました。
13歳の少年ジェイミー・ミラーが同級生の少女を殺害した容疑で逮捕されるシーンから始まるこの作品は、全4話で1話ワンカット(カットなし)で撮影という圧巻の映像体験が味わえます。筆者は『アドレセンス』を観て子どもとのかかわり方を改めて考えさせられました。子どもとかかわる方にはぜひ観てほしい、強烈な印象を残す、傑作ドラマです。

※この記事は『アドレセンス』の一部ネタバレを含みます

Netflix『アドレセンス』のあらすじ

Netflix『アドレセンス』のあらすじ

13歳の少年ジェイミー・ミラーは同級生の少女ケイティ・レナードを殺害した容疑で逮捕されるが、容疑を否認。事件を追うバスコム警部とフランク巡査部長はジェイミーの学校で聞き取りをするうち、生徒の間で行われるSNS上のやり取りに注目するようになる。
収容された施設でジェイミーは心理士アリストンと何度か会話を重ねるうち、事件と自身の心の裡(うち)を語りだす。残されたジェイミーの家族たちは中傷を受けながらも、無実を信じているが……。

『アドレセンス』は約60分×4話の構成

『アドレセンス』は約60分×4話の構成
▲拘置所に入ったジェイミー・ミラー(オーウェン・クーパー)と父のエディ・ミラー(スティーブン・グレアム)。

『アドレセンス』は約60分×4話の構成。各回の内容は以下のとおりです。

1話……ジェイミーが自宅で逮捕され、留置所で取り調べを受ける
2話……事件から3日後、刑事バスコムとフランクがジェイミーの学校で事件について調査する
3話……事件から7カ月後、法定心理学者のブリオニー・アリストンが少年院に収監されているジェイミーと対話する
4話……事件から1年以上後、ジェイミーの父エディの誕生日を祝う母リサと姉マンダが周囲から中傷される中、事件を見つめ直す

ジェイミーは逮捕当日、自宅の部屋に踏み込んできた警察に驚き失禁するなど、かよわい少年に見えます。
1話では、採血や取り調べに立ち会う「適切な大人」に父エディを指名するなど、親に甘え、頼る子どもであることが分かります。
一方で、3話の心理士アリストンとの対話では年相応の欲望を明らかにし、ときに暴力的に振る舞うなど違った一面も見せ始めます。

男女対立に巻き込まれる、若年層の危機的状況が浮き彫りに

この作品で焦点があてられるのは「真犯人は誰か?」という点ではありません。「なぜ事件は起きてしまったのか?」を考えさせられるのです。

2話で刑事バスコムたちが調査する学校では少年少女の間で陰湿ないじめが行われていることが分かります。同時に、教師たちも動揺の中とはいえ授業で生徒を放置し、強すぎるぐらいに叱責するなど問題を抱えているのが見えてきます。

男女対立に巻き込まれる、若年層の危機的状況が浮き彫りに
▲刑事バスコムの息子、アダム(アマリ・バッカス)。おっとりした性格でいじめに遭っている。

バスコムの息子、アダムが教えてくれるのが、ジェイミーやケイティたちがInstagramで使っている絵文字の意味と、マノスフィア(Manosphere)の存在。
「マノスフィア」は近年、主にSNS上で存在が大きくなってきている「男性的世界」のようなもの。女性と対立し、女性側はジェイミーを「非自発的な独身者=インセル」だと馬鹿にしています。

作中でも言及されるアンドリュー・テイトは1,000万人を超えるフォロワーを持つ、女性差別的な思想を持つインフルエンサー。マノスフィアの先駆者とされ、多くの犯罪で告発されていますが、多くの若い男性が好意的な反応を示しているといいます。

ジェイミーたちが思っていた以上に複雑な世界でやり取りをしていたことが明らかになっていきます。

1話ワンカットの圧巻の撮影

1話ワンカットの圧巻の撮影
▲ジェイミーと、心理士ブリオニー・アリストン (エリン・ドハティ)の撮影風景。

『アドレセンス』を貫くのが、一瞬も気を抜けない緊張感。それを支えるのが1話ワンカットの撮影。シーンの転換も常にカメラが動き回り、ときにドローンを使って警察署と家を行き来します。

1話でも刑事の突入から逮捕、弁護士への刑事からの状況説明、ジェイミーの写真撮影・サンプル採取・指紋採取、取り調べ……と一度もカットが切り替わりません。
カメラは常にフォロー(登場人物を前や後ろから追いかける)をし、当たり前ですが俳優がカメラに目を合わせることはありません。

▲(キャプション)ジェイミーと、心理士ブリオニー・アリストン (エリン・ドハティ)の撮影風景。
▲学校で事件について調べる刑事のバスコム(左:アシュリー・ウォルターズ)とフランク(右:フェイ・マーセイ)の撮影風景。

たとえば『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『1917 命をかけた伝令』など映画一編をワンカットで撮影した作品は他にもありますが、『アドレセンス』では1話ごとにカットを変えることで中心人物と時系列の変化も表現しています。

監督のフィリップ・バランティーニによれば、TikTok時代における散漫な集中力への意図的な挑戦として1話ワンカットの手法を採用したとのこと。SNSでスクロールして短尺の動画をスワイプして観る時代に、立ち止まってこの状況を注視してほしかったようです。

ワンカットがもたらす効果と、子役の超絶演技

ワンカットがもたらす効果と、子役の超絶演技
▲ジェイミー役のオーウェン・クーパーは本作で初演技ながら存在感を見せ、マーゴット・ロビーなどとの『嵐が丘』に出演予定。

この1話ワンカットの手法はいくつか大きな効果をもたらしています。

1つ目は「逃れられなさ」が表現されていること。「アドレセンス=思春期」という意味ですが、思春期を迎えた子どもの通う学校が、世界そのもののような狭さや逃れられなさ、その残酷さが強く表れています。

2つ目は、否応なしに人の目線が気になってくる点です。大人からは子どもの目線が、子どもからは大人の目線が気になってくる。シーンの転換の際にクロースアップも多用されるので「いまこの人物はどんな心理なんだろう?」と深く考えさせられます。

ジェイミーの目線から見た警察や少年院の大人たちは事務的でありながら、妙に優しくも見えます。信用できるようにも見えますが、そこに欺瞞(ぎまん)も見え隠れする。

ワンカットがもたらす効果と、子役の超絶演技

特に圧巻なのは3話で心理士のブリオニー・アリストンとジェイミーが対峙するシーン。場面転換はほとんどなく、密室の2人のやり取りが中心です。

主役のジェイミー役のオーウェン・クーパーは500人のオーディションを勝ち抜いたものの、当時14歳で演技未経験だったそう。気迫とリアリティにあふれる演技には名優ロバート・デニーロが賛辞を送り、スティーブン・スピルバーグもすぐにコンタクトをとったそうです。

どうすればよかったか?涙なしには観られないラスト

どうすればよかったか?涙なしには観られないラスト
▲父エディの誕生日に出かける母リサ(アメリー・ピース)と、姉のマンダ(クリスティン・トレマルコ)。

『アドレセンス』のすごさは、最終話の持って行き方です。てっきりジェイミーがケイティ殺害の犯人なのか法廷で争うのか……と思いきや、ジェイミーの父エディ・ミラーと母、姉たちの日常を描くシーンで終わります。

「加害者家族」となったエディたちは車に心ないいたずら描きをされ、中傷をされ……安穏な日々はありません。そんな中でもジェイミーの無実を信じるからこそやっていけるのですが……。

正直に言って、筆者自身、息子を持つ父親として最後のシーンには涙を禁じ得ませんでした。
ジェイミーの部屋に入って、壁に飾られた写真や残されたぬいぐるみを見て嗚咽するラスト数分のエディ・ミラー役のスティーブン・グレアムの演技は圧倒的でした。

どうすればよかったか?涙なしには観られないラスト
▲エディ・ミラー役のスティーブン・グレアムは『アドレセンス』の企画・製作・共同脚本も担当。

どんな理由があっても残忍な事件を起こしたとしたら許されるものではない。いじめられ煽られたとしても、大人の無理解があったとしても……それでもこのシーンで、この部屋に失禁した一人のかよわき子どもがそこにいたことを思い出させられるのです。親や周りの大人にもっとできることはなかったのか、と。

エディ役のグレアムとともに脚本を担当したジャック・ソーンは「男性の怒り、少年の怒りを表現した」といいます。イギリスで実際に起きた少女の刺殺事件を題材に、いま少年たちに何が起きているのかを考えようと。

印象的だったのは「昔、苦手なサッカーで失敗した」とジェイミーが語るシーン。「パパは応援してくれたけど、僕のプレイを見ると目をそらした」とジェイミーはいいます。父のエディもそれには自覚的で、この「交わされなかった視線」こそが『アドレセンス』の中心にはあるのだなと思いました。1話ワンカットの手法が、いやでもそれを意識させます。

『アドレセンス』で描かれているのはエディたち父世代の男性とジェイミーたち少年世代の怒りで、そして女性の置かれる深刻な状況、スマホやSNSの世界で追い詰められていく少年・少女の危機的状況です。

ジェイミーたちを追い詰めていく人たちもいれば、救えたかもしれない人たちもいる。「ではどうすればよかったか?」を強く考えさせられるのです。

まとめ

イギリスのスターマー首相が「私には16歳の息子と14歳の娘がいます。この作品は胸に深く突き刺さりました」と議会で言及したという『アドレセンス』。父エディや母リサたちは十分ジェイミーにかかわっていたはずなのですが、自分たちの子ども時代とは想像できないほど厳しい状況に子どもが置かれるようにもなっている事実があります。
筆者も『アドレセンス』を観て子どもとのかかわり方を改めて考えさせられました。

ほかでは味わえない映像体験と、緊迫のドラマが共存する『アドレセンス』をぜひチェックしてみてください。

【Netflixシリーズ『アドレセンス』独占配信中】


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