Netflix『フランケンシュタイン』あらすじ・キャストと、意外な結末の理由

Netflix『フランケンシュタイン』あらすじ・キャストと、意外な結末の理由

ギレルモ・デル・トロ監督の映画『フランケンシュタイン』が2025年11月7日からNetflixで独占配信スタートしました。公開開始直後93カ国のトップ10にランクインし、72カ国で1位に。10月24日からは一部劇場で同時公開されています。
メアリー・シェリーによる原作や既存の映画作品とは怪物のデザインや設定・シナリオに違いがありますが、かなり原作と真剣に向き合った骨太の作品という印象です。7歳で1931年版の映画に出会い、原作も愛読しているというギレルモ・デル・トロ監督が30年以上構想を練ってつくりあげた映画『フランケンシュタイン』。作品の内容や監督の発言、原作者の背景などから、その根底にあるテーマを考えてみます。

※この記事はNetflix映画『フランケンシュタイン』のネタバレを含みます。

Netflix『フランケンシュタイン』のあらすじ

Netflix『フランケンシュタイン』のあらすじ

19世紀、北極海に停泊するデンマークの船。探検隊は氷の上でけがをした男と、彼を追いかける怪物の存在を知る。その男、ヴィクターはこれまでの半生を振り返る。

ヴィクター・フランケンシュタインは没落した名家から離れ、エジンバラで死体に電気を流し動かす研究をしていた。やがて資産家のハーランダーから投資を持ちかけられ、ヴィクターは古い給水塔を多額の資金をかけて改装し、死体を継ぎはぎして実験を続ける。実験の傍らでヴィクターは弟・ウィリアムの婚約者でハーランダーの姪・エリザベスに惹かれていく。

落雷のエネルギーを利用し、ついにつぎはぎの死体を新しい存在に蘇らせたヴィクター。しかし言葉をうまく操れない怪物と彼に心を許すエリザベスにいら立ち、ヴィクターは怪物をなきものにしようとする。
やがて怪物とヴィクターは憎み合い、地の果てまで逃走と追跡を続けていく……。

Netflix『フランケンシュタイン』の登場人物(キャスト)

Netflix映画『フランケンシュタイン』の登場人物とキャストを紹介します。

ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)

ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)

ヴィクター・フランケンシュタインはイギリスの外科医で男爵の父の元に生まれる。自分を嫌い、むち打つ父に対し唯一の心の支えだった母を亡くしたヴィクターは「死」の克服を目指し、怪物をつくり上げる。優秀な科学者だが、利己的で傲慢な性格。家族を亡きものにした怪物への復讐を誓う。弟の婚約者エリザベスに惹かれていく。

演じるオスカー・アイザックは『スター・ウォーズ』7作目以降のポー・ダメロン役、『デューン』『エクス・マキナ』で知られるアメリカの俳優。ヴィクターはデル・トロ監督の「当て書き」だったそうです。

怪物(ジェイコブ・エロルディ) 

怪物(ジェイコブ・エロルディ) 

ヴィクターにより死体から生み出された怪物。複数の人物の死体を繋いでいるためか記憶が混濁している。不死の存在で傷はすぐに癒える上、大人の男性を軽く手で吹き飛ばすほどの怪力を持つ。心優しく無垢で穏やかだが、周囲からの恐怖や暴力に反応するうち、自分の出生を呪いヴィクターを憎むようになる。

怪物を演じるジェイコブ・エロルディはオーストラリア出身の俳優。190センチメートル超えの身長を活かした怪物の演技は圧巻です。
今回の『フランケンシュタイン』のために日本の舞踏を学び、デル・トロ監督からいわれ「犬」のような無垢さや佇まいを研究したそう。怪物の特殊メイクには10~12時間かかったようです。

※よく誤解されますが、怪物には名前がなく「(フランケンシュタインの)怪物」と呼ばれます。

エリザベス・ハーランダー/クレア・フランケンシュタイン(ミア・ゴス)

エリザベス・ハーランダー/クレア・フランケンシュタイン(ミア・ゴス)

修道学校を出たあと、ヴィクターの弟ウィリアムと婚約。自然界や虫が好きで、概念よりも事実を重んじる。ヴィクターの研究に興味を示すも、怪物の内部に見える穏やかさに惹かれ、怪物に対するヴィクターの接し方に疑問を持つ。
※原作や今までの映画の多くではエリザベスはヴィクターの婚約者として描かれてきました。

エリザベスを演じるのは『X エックス』『EMMA エマ』などに出演するイギリスの俳優ミア・ゴス。ヴィクターの母親・クレアも演じています。赤を基調としたクレアに対し、緑や虫・自然がテーマのエリザベスの衣装にも注目。

ウィリアム・フランケンシュタイン(フェリックス・カマラー)

ウィリアム・フランケンシュタイン(フェリックス・カマラー)

ウィリアムはヴィクターの弟で、母の死とともに生まれ、父の寵愛を受けて育つ。金融の仕事で成功し、エリザベスと婚約。

原作では幼くして怪物に手をかけられるためあまり登場機会はありませんでしたが、Netflix映画『フランケンシュタイン』ではヴィクターに対し複雑な思いを抱く役どころで作品に違う角度での魅力を与えています。

ウィリアム役のフェリックス・カマラーはオーストリアの俳優。Netflix映画『西部戦線異状なし』の主役パウルを演じ、(当時)映画初出演ながら世界中から高い評価を受けました。

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ハインリヒ・ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)

ハインリヒ・ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)

ハーランダーはクリミア戦争下で成功を治めた武器商人で、多額の資金をヴィクターの研究に投じる。機知に富む人物ながら、ヴィクターの研究に対しては秘められた目的を持つ。

ハーランダーを演じるウィーン出身の俳優クリストフ・ヴァルツはクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』や『ジャンゴ 繋がれざる者』で二度アカデミー助演男優賞を受賞。デル・トロ監督のNetflix『ピノッキオ』では悪役ヴォルペ伯爵の声を担当しています。

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怪物をつくった怪物。父と子と「許し」の結末の意味

怪物をつくった怪物。父と子と「許し」の結末の意味

Netflix映画『フランケンシュタイン』は2部構成。第1部は「ヴィクターの話」で、第2部「怪物の話」と二人それぞれの視点から描かれます。

父から愛されず母を失った過去があるとはいえ、死の克服のため突き進むヴィクター。エリザベスに(同じミア・ゴスが演じる)母を投影しますが、彼女に愛されることはありません。一方、ヴィクターによってつくられた怪物は身体こそ大きく不気味ではありますが、葉っぱを水に浮かべて遊ぶシーンなどかわいらしくすら見えます。エリザベスの密かな愛を受けるのは怪物の方でした。

葉っぱを水に浮かべて遊ぶシーンなどかわいらしくすら見えます。エリザベスの密かな愛を受けるのは怪物の方でした。

「創生後を考えていなかった」と告白するように「無責任な父親」であるヴィクター。最初こそ怪物の世話をしますが、もの覚えが悪いと見ると結局自分の父親と同じく鎖で縛り付け痛めつけてしまいます。

デル・トロ監督は自分の父と自分の関係、自分の子に受け継がれる関係もこの作品に反映されていると考えているそうです。

デル・トロ監督は自分の父と自分の関係、自分の子に受け継がれる関係もこの作品に反映されていると考えているそうです。

作中で盲目の老人が怪物に「傷ついたことと誰にやられたかを知り、それを許し、忘れるのだ」と教えます。物語の最後でヴィクターも怪物も互いに許し合いますが、ここが今までの『フランケンシュタイン』の映像作品と大きく違う点でしょう。

デル・トロ監督は「怪物は憎しみに対しては憎しみを返す。凍った船が最後に動くのは、怪物が自分の意思で相手を愛そうとした象徴だ」と語ります。不寛容がはびこる時代にこそ、この結末が刺さります。

不死の嫌悪と、欠陥だらけだからこそ愛おしい人間

不死の嫌悪と、欠陥だらけだからこそ愛おしい人間

デル・トロ監督は不死を嫌っているそうです。クリミア戦争で富を得た「死の商人」ハーランダーは、梅毒に感染し先が長くありません。彼の裏の目的は怪物の中に自らの魂を移植すること。不死を望んでいる一方で、それは達成されない。ヴィクターもまた、母の死以来ずっと生よりも死の克服に邁進してきました。

怪物は不死を嫌い、死を求めます。怪物はどんなにひどい目に遭って絶望しても自ら死を選ぶことができません。傷はたちどころに治ってしまう。それならばと孤独を埋める伴侶をヴィクターに求めますが、それも拒絶される。

怪物(creature)は文脈によって「怪物」と訳されることがありますが、別の意味として造物主(神)による「被造物」があります。作者の手を離れて永く生きる作品に対して、有限で欠陥だらけの人間。しかし“間違ったことは正しい方向へ進む”と考えるデル・トロ監督は欠陥だらけでも許しあい進む人間の不完全さにこそ美しさを見い出し、このエンディングを描いたのだと思いました。

何度も映像化されてきた『フランケンシュタイン』の魅力

何度も映像化されてきた『フランケンシュタイン』の魅力

1931年のボリス・カーロフが怪物を演じた実写化に始まり、『フランケンシュタインの花嫁』などの続編、ロバート・デ・ニーロとケネス・ブラナーによる1994年の『フランケンシュタイン』……と何度も映画化されてきました。

近年の日本でも浦沢直樹『MONSTER』や藤田和日郎『怪物よ、三日月と踊れ』などの漫画、伊藤計劃『屍者の帝国』などの小説、と影響を受けた作品は枚挙にいとまがありません。「創作物と作者の関係性」や人間の根本的な存在について考えさせられる作品だからこそ『フランケンシュタイン』は創作者の心を引きつけてきたのではないでしょうか。

原作者メアリー・シェリーは20歳で『フランケンシュタイン』を出版

原作者のメアリー・シェリーは1797年、ロンドン生まれ。産業革命、アメリカ独立、フランス革命後のナポレオン戦争の時代に青春を過ごします。
父は無神論者でアナーキスト(無政府主義者)のウィリアム・ゴドウィン、母はフェミニズムの創始者ともいわれるメアリー・ウルストンクラフト……と両親が物書きという環境に生まれました。
17歳の頃に詩人パーシー・ビッシュ・シェリーと駆け落ちし、1816年にジュネーブ近郊の(この映画『フランケンシュタイン』でも引用されている)詩人バイロン卿の別荘で『フランケンシュタイン または現代のプロメテウス』を執筆しはじめ、1818年に匿名で出版しました。

母はメアリーを産んで10日後に亡くなるなど孤独な少女時代を過ごしました。こういった生い立ちや王政や教会の権威を否定する父ウィリアムの考え方が、神への冒涜ともいえる「生命の創造」といったテーマへの挑戦に影響しているのかもしれません。
早くに夫パーシーを亡くしたメアリーは、シングルマザーとして息子を育てるため執筆生活を続けたそうです。

※ちなみにNetflix『ウェンズデー』では、小説を夜な夜な書く主人公ウェンズデーが若くして出版したメアリー・シェリーをライバル視する描写が出てきます。

・関連記事:Netflix『ウェンズデー』シーズン2の見どころ あらすじ・キャスト

美しく作りこまれた美術・衣装も影の主役

美しく作りこまれた美術・衣装も影の主役

デル・トロ監督は「メアリー・シェリーにとって『フランケンシュタイン』は現代の物語だった」として、この映画の衣装や美術に現代的なデザインや配色を求めました。

Netflix映画『徹底解剖!「フランケンシュタイン」のすべて』の中でギレルモ・デル・トロ監督は「テーブルの脚は4本。美術。撮影。衣装。ヘアメイクだ」と語ります。映画においてこの4部門は完全に連携する必要があり、監督の役割は彼らを指揮し対話を繰り返すことだ、と。

Netflix映画『徹底解剖!「フランケンシュタイン」のすべて』

驚いたことに、凍ったデンマーク船や氷もすべてセットで、広大な駐車場につくられています。船の内装・外装は本物で、ジンバルという装置でその巨体を9度ずつ傾けられるようになっているとのことです。

蒸気機関や伸縮式の純銀製の避雷針の設計ギミックなど

蒸気機関や伸縮式の純銀製の避雷針の設計ギミックなど、いわゆる「スチームパンク」的な意匠がかっこいいのですが、序盤の中心的な舞台となる全長137メートルの塔も巨大なセットとは別に、爆破シーンを撮るため(ミニチュアながら)9メートルの塔の模型をつくったそうです。

この衣装や美術へのこだわりが随所に見られるのも『フランケンシュタイン』の魅力。ぜひ『徹底解剖!「フランケンシュタイン」のすべて』も合わせてチェックしてみてください。

Netflix映画『徹底解剖!「フランケンシュタイン」のすべて』独占配信中

まとめ

AIやCGで多くの表現をつくることができる時代に、あえて手づくりの部分を多く残したデル・トロ監督のアプローチは、上に述べたような『フランケンシュタイン』の「被造物/造物主」というテーマを踏まえたものだと思います。それゆえものすごい予算がかかっているわけですが、それだけに美術・衣装など各部門のクリエーターのこだわりが見えたのも楽しかったです。
純然なSFホラーとしてはもちろん、グロテスクで美しい映像・衣装・美術、心に残るストーリーをぜひ楽しんでみてください。

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