Netflixで配信中の韓国ドラマ『ナルコの神』は、衝撃の実話を基にしたクライムアクション。南米の小さな国スリナムの裏社会を牛耳る麻薬王の逮捕作戦に民間人が巻き込まれていく姿を描いています。
配信直後にNetflixのグローバルトップ10のドラマ非英語部門で1位を獲得した本作の見どころを紹介します。
※本記事は『ナルコの神』の一部ネタバレを含みます。
『ナルコの神』あらすじ
昼は車の整備工場、夜はカラオケバーを営むカン・イング（ハ・ジョンウ）は友人のウンス（ヒョン・ボンシク）から新たなビジネスに誘われる。それは、とある国で食べずに捨てられる魚のエイをタダで仕入れ、韓国で売るというものだ。いくら働いても楽にならない生活に嫌気が差していたイングはウンスの儲け話に乗っかることを決意。妻の反対を押し切って南米の国スリナムに渡った。
だがイングたちは事業開始早々、チャイニーズマフィアのジェン（チャン・チェン）に目をつけられ、法外なみかじめ料を要求される。窮地に陥った2人を救ってくれたのは、現地の教会で牧師を務める韓国人のチョン・ヨファン（ファン・ジョンミン）。その裏の顔はスリナムの裏社会を牛耳る麻薬王であり、イングは思いもよらない出来事に巻き込まれていくのだった。
チョン・ヨファンのモデルとなった麻薬の神とは
「スリナムという国をあなたは知らないだろう。ブラジルの上にある人口50万人の小さな国。国土の半分がジャングルで、国民の半分以上が麻薬産業に関わる多民族、多言語国家だ。そこになぜ韓国人がいるのか？その理由をこれから話そう。信じられないだろうがすべては俺が体験したことだ。話の真偽を疑う人もいるだろう。だが、最後まで聞いてほしい」
そんなイングの独白から幕を開ける『ナルコの神』は、実話を基にしたクライムアクション。本作に登場するチョン・ヨファンのモデルとなったのは、1990年代末〜2000年代初頭にかけてスリナムを拠点に暗躍した麻薬王チョ・ボンヘンです。
チョ・ボンヘンは南米の麻薬カルテルと手を組み、スリナムで巨大麻薬組織を構築。政府高官も顧客として取り込み、大統領からも庇護を受けていたといわれるほど、現地で影響力を持っていたそう。2009年、取引のためにブラジルを訪れたボンヘンは、韓国国家情報院とアメリカ麻薬取締局（DEA）、現地警察の共同捜査により逮捕されました。その後、韓国に送還され、懲役10年をいい渡されましたが、服役中に持病の悪化で死亡したとされています。
ユン・ジョンビン監督はこのボンヘンをモデルにしたキャラクターに、多数の信者を率いる牧師という要素を追加。スリナムという小さな国で、ナルコ＝麻薬の神となったボンヘンの影響力の大きさを描き出そうとしています。
国家情報院の極秘作戦に加わった民間人は普通のお父さんだった？
そんな稀代の悪人チョ・ボンヘンの逮捕に一役買ったと言われているのが、Kと呼ばれる民間人です。出稼ぎで渡ったスリナムでボンヘンの被害を受けたKは、国家情報院から協力を求められ、民間人ながらボンヘンを検挙するための極秘作戦に参加しました。本作の主人公であるイングは、この民間人Kがモデルとなっています。
作品の中ではうまい儲け話に乗っただけなのに、チャイニーズマフィアに殺されかけたと思ったら、濡れ衣を着せられて刑務所送りとなり、民間人なのにチョン・ヨファンの逮捕作戦に協力した挙句に激しい銃撃戦に巻き込まれるイング。あくまでも本作は実話を基にしたフィクションですが、80%はKへの取材から得た情報を反映させたエピソードとのことで、まさに「事実は小説より奇なり」です。
作中のイングの生い立ちもほぼ実話で、Kも幼い頃から弟と妹の面倒を見ながら働いていた苦労人で、生活のために知り合いの女性に片っ端から電話をして結婚を迫ったといいます。軍人やマフィアの脅しにも屈せず交渉を持ちかけ、国家情報院から協力を求められた際にも真っ先に報酬を迫るなど、商魂たくましい人物として描かれているイング。
一方で、イングがそこまでお金に執着する裏には、自分と同じような苦労を子供たちに味わわせたくないという思いがあります。もしかしたら、Kもイングと同様に子供の幸せを願う“普通のお父さん”だったのかもしれません。映画『神と共に』シリーズをヒットに導いた実力派ハ・ジョンウは、随所に父の愛を覗かせる人間臭い芝居でイングを熱演しました。
『ナルコの神』登場人物
カン・イング（ハ・ジョンウ）
昼は車の整備工場、夜はカラオケバーを営む経営者。敬虔なクリスチャンである妻との間に2人の子をもうける。友人のウンスに誘われ、新たなビジネス開拓のために単身スリナムへ。そこで裏社会を牛耳る麻薬王チョン・ヨファンにはめられ、国家情報院の極秘作戦に関わることになる。
チョン・ヨファン（ファン・ジョンミン）
イングがスリナムで知り合う牧師。農場や工場を寄付する資産家で、「スリナムの総督」と呼ばれるほどの影響力を持っている。その裏の顔は、大統領の後ろ盾でコカインの密売を独占する麻薬王。コカインで洗脳した信者たちを率いている。
チェ・チャンホ（パク・ヘス）
国家情報院の捜査官。ヨファンを韓国と犯罪人引渡し条約を結んでいる国に誘き出すため、濡れ衣を着せられて刑務所送りにされたイングに接触。ヨファンの逮捕作戦に協力を求める。
チェン・ジェン（チャン・チェン）
チャイニーズマフィアのボス。スリナムでビジネスを開拓するイングとウンスに法外なみかじめ料を要求する。裏切り者に無残な仕打ちを平気で出来る血も涙も無い人物。
ビョン・ギテ（チョ・ウジン）
ヨファンから右腕として絶大な信頼を受ける人物。麻薬組織の行動隊長として活躍している。
デビッド・パク（ユ・ヨンソク）
ヨファンの顧問弁護士。頭脳派でヨファンが率いる麻薬組織の中核を担っている。
パク・ウンス（ヒョン・ボンシク）
イングの友人。スリナムで食べられずに捨てられるエイをタダで仕入れ、韓国で売るという商売にイングを誘う。掛け算が苦手。自分たちを助けてくれた牧師ヨファンの裏の顔を知ってしまい、その手下に殺されてしまう。
まとめ
民間人を巻き込んだ実在した麻薬王の逮捕作戦を描いたNetflix『ナルコの神』は息をするのも忘れるくらいに猛スピードで展開していくクライムアクション。Netflixシリーズの中では全6話と短めになっているので、飽きることなく最後まで一気に観ることができます。ほとんどが実話に基づくエピソードということを念頭に置きながら観るとより一層物語を楽しめることでしょう。
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