水木しげるが1963年から連載を始めた『悪魔くん』が、Netflixシリーズとして33年ぶりに復活。完全新作として生まれ変わる今作の総監督は、なんと1989年版テレビアニメ『悪魔くん』でシリーズディレクターを担当していた佐藤順一氏。オカルト文化を日本中に知らしめた水木しげるの代表作、その正当な続編ともいえる本作の魅力を紹介します。
『悪魔くん』のあらすじ
1万人に一人の天才で「悪魔くん」と呼ばれる埋れ木一郎と、悪魔と人間の血を引くメフィスト3世は、「千年王国研究所」で怪異の調査研究を行っていた。ある日、女子大生の朝凪ヒナが、5人の友人が当日同時刻に変死した事件を調査してほしいと訪ねてくる。なんとこの事件には悪魔が関係していた。次々と巻き起こる奇怪な事件を、相性抜群の2人が解決へと導いていく……。
『悪魔くん』の登場人物・キャスト
埋れ木一郎/悪魔くん（声：梶裕貴）
1万人に一人の天才として、千年王国研究所で超自然現象について調べる青年。初代悪魔くんである埋れ木真吾に育てられ、2代目悪魔くんとなる。クールな性格で常に高飛車、人の心を読むことが苦手で、問題行動ばかりが目立つが、メフィスト3世の必死のフォローによって何とかなっている。悪魔くんの使命である「悪魔がもたらす不幸をなくし平和な楽園を作る」ことよりも、自分の出生の謎について解き明かすことを目的として行動をする。
メフィスト3世（声：古川登志夫）
悪魔くんとコンビを組み、悪魔が引き起こす奇怪な事件を調査している。悪魔くんの度重なる問題行動や意見の違いによって、何度も仲違いをするが、切っても切れない縁で悪魔くんと繋がっているのか、いつの間にか手助けをしてしまう。実は大家である風間さなえに恋心を抱いている？ かも。
朝凪ヒナ（声：藤井ゆきよ）
5人の友人が突然変死したことを不審に思い、悪魔くんの噂を聞きつけ、千年王国研究所にやってくる女子大生。
風間さなえ（声：白石涼子）
「千年王国研究所」がある建物を管理している大家さん。突然行方不明になった夫の帰りを待ちつつ、一人娘のみおを育てるシングルマザー。
風間みお（声：花守ゆみり）
風間さなえの一人娘。飼い猫であるちゅーすけとともに、悪魔くんたちが滞納している家賃を回収しにやってくる。
グレモリー（声：ファイルーズあい）
美しい女性のような見た目をしている暴食の悪魔。悪魔くんの心臓を狙っているが、事件解決のためにともに行動することもある。
サタン（声：屋良有作）
「悪魔の中の悪魔」と呼ばれる悪魔。その本当の姿や能力など、全て謎に包まれている。
ストロファイア（声：下野紘）
埋れ木一郎の幼少期と何か関係があるといわれている赤い羽根を持つ謎の存在。
『悪魔くん』の見どころ
悪魔くんとメフィスト3世の深い絆
悪魔くんとメフィスト3世は、バディの関係でありながら、さまざまな対比を表しているかのように表現されています。人間でありながら悪魔の知識に詳しい悪魔くんと、半悪魔なのに知識に乏しいメフィスト3世。また性格面でも、悪魔くんは自分優先で論理的、メフィスト3世は感情的ですが優しい心の持ち主です。他にもさまざまなシーンで正反対の存在として描かれますが、それゆえにお互いがお互いを補完し、尊重しあえる存在になっているのだと考えられます。
また物語が進むにつれて、悪魔くんとメフィスト3世の成長も感じられます。どのストーリーでも悪魔を呼ぶ理由が人間臭く、毎回2人はそれについて考えることに。結論は対立してばかりですが、困難を乗り越えることで2人の絆はより強固に。また1つの出来事を2つの視点で考えられることで、お互いの成長を促しているのかもしれません。
原作リスペクト、美麗なビジュアル
『悪魔くん』のキャラクターデザインは、水木しげるが描く特徴的なイラストを継承しつつも、細かな動きや表情、背景の細部では現代的な美麗さで魅せることで、古くも新しいデザインに仕上がっています。
また事件発生の雰囲気や悪魔登場シーンなどは、オカルト界の巨匠である水木しげるの世界観を見事に再現したように不気味な雰囲気。日常シーンとのギャップが大きいこともあり、よりおどろおどろしい雰囲気を醸しだしています。
また悪魔くんと悪魔のアクションシーンは、魔法の演出やスピード感のあるキャラクターの動きなど、ダイナミックな迫力があります。影や照明の明滅も巧みに使いこなしており、ムードや緊張感のあるシーンを演出しています。
誰の深層にも眠る少しの悪魔性
『悪魔くん』で登場する悪魔は、「暴食」や「嫉妬」「憎悪」など誰もが持っている感情をほんの少し高ぶらせることで、事件を発生させます。しかしそのきっかけは友情や愛情といったポジティブな感情であることがほとんど。
ポップなビジュアルと淡々としたストーリーで語られる『悪魔くん』は、オカルトチックな探偵ものであるように思いますが、その中には善と悪や、現実と理想といった深いテーマが隠されています。
人間と悪魔という分かりやすい対比でこれらを表現していますが、感情や言動で揺れ動く人間の弱さが全12話を通して、いろいろと考えさせられる作品に仕上がっています。
それが顕著に出ていたのが第4話。2人の男性の間にあったのは友情なのか嫉妬だったのか。最後まで分からないまま話は終わってしまいますが、悪魔くんは嫉妬であったと考え、メフィスト3世は友情であったと考えることで、対立してしまいます。このフラグは2人の関係性を深めるうえで重要なファクターの1つでしたが、それ以外にも人間の本質をうまく写した話でした。
まとめ
オカルト界の巨匠である水木しげるの代表作『悪魔くん』の新作アニメ。悪魔が起こす超自然現象的な事件を解決する千年王国研究所の2人のかけ合いと、悪魔とのバトルシーンは目を見張るものがあります。人間の深層心理をつく深いテーマが隠された本作は、大人も子供も楽しめる作品に仕上がっています。ぜひ家族みんなで鑑賞してみてください。
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