『エクセプション』の登場人物(声優)
ニーナ(甲斐田裕子)——いかなるときも人命尊重の態度を貫く心優しい医師。
マック(櫻井孝宏)——エリート意識が強くあらゆる面で秀でた才能を発揮する現場主任。
パティ(種崎敦美)——努力家で何事にもひたむきな植物学者。
オスカー(星野貴紀)——日和見主義でトラブルを好まない温厚なコンピューター技師。
ルイス(小林親弘)——紳士的で仲間思いだが、恋人を失った心の傷を抱える大気変換炉技師。
「ミスプリント」でルイスが“怪物”に。誰が裏切り者なのか?
出力の途中、思わぬ事故が発生し、ルイスの体にエラーが生じる。「ミスプリント」され不気味な怪物と化したルイスを殺処分しようとするが、隙を見て逃げ出した彼は仲間を次々と襲っていく……。
……と、このあたりまではリドリー・スコットの映画『エイリアン』のような展開だが、中盤から事態は不思議な方向へ向かっていく。
テラフォーミング用の爆弾が消えたことにより、この宇宙船に「裏切り者」がいることがわかる。
誰が「裏切り者」なのか? 本当にこの中に犯人がいるのか? それとも……? 疑心暗鬼のなか、クルーたちの心理戦が始まる。
『エイリアン』×『Among Us』的展開だが実は…
『Among Us』『グノーシア』を思わせるが…企画開始はずっと前
「宇宙船×閉鎖空間×裏切り者探し」というキーワードで、まっさきに思い浮かぶのは『Among Us』だ。
『Among Us』は2018年にInnerSloth社によって開発され、2020年にニンテンドーSwitchで無料ダウンロードできるようになったことで爆発的に流行したオンラインゲームである。
ゲーム内容を簡単に説明すると「宇宙船を舞台にした人狼ゲーム」ということになる。
数人のプレイヤーたちは、クルー陣営とインポスター陣営に分かれて対戦する。クルー側は与えられたタスクをすすめつつ、インポスター(裏切り者)を見つけ出して排除、インポスター側はクルーを排除しつつタスクを妨害をする。
人狼ゲームは、2014年ごろに動画配信やテレビやイベントなどでブームが起こり、その後定番となったが、デジタル化によってその幅をさらに拡げることになった。『Among Us』はまさにその爆心地とも言える。
『エクセプション』は、前半が古典的名作SF映画『エイリアン』、後半が宇宙人狼ゲーム『Among Us』的味付がなされているように見えるが、これはなかなかのアイデアだと感じた。さらに、それだけではなく、生体3Dプリンターによる「自己の複数性」「オリジナルとはなにか?」「生命倫理」など、哲学的なテーマも入っており、このあたりは同じく宇宙を舞台にした人狼ゲーム『グノーシア』も思わせる。
『グノーシア』(GNOSIA)は、2019年にPlayStation Vita用ソフトとして配信された「1人用人狼ゲーム」だ。ひとりで人狼ゲームができるというのも驚きだが、複数回プレイすることでシナリオが進み、ゲームの構造自体に大きな仕掛けが施されている(2020年にSwitchに移植されたので、ぜひプレイを)。
ゲーム好きな安達(乙一)のことである。こうした先行作品の影響に言及しているかなと思い、シナリオブックを買って読んでみたのだが、なんと……そこにはまったくちがうことが書かれていた。
構想段階では『エイリアン』『11人いる!』などの作品の名前が
“この企画がどのようにはじまったのかについてまずは説明したい。2017年、アニメプロデューサーの櫻井さんから連絡をいただいたことが、すべてのスタート地点だったと思う。”
“2018年に入り、渋谷の喫茶店で打ち合わせが行われた。どんなアニメを制作すべきか? Netflixの視聴者の傾向から、ホラーやバイオレンス要素のある作品のほうが良いとの意見があった。アットホームなアニメはNetflixではあまり受けないらしい。”(『「エクセプション」脚本集』安達寛高 (星海社 e-FICTIONS))
ここで名前が出ている櫻井とは、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のアニメシリーズで脚本家としてデビューした、元プロダクションIGの櫻井圭記である。さらに、打ち合わせの会話のなかで、「萩尾望都の『11人いる!』」、「宇宙船が舞台」「エイリアン」、などのキーワードが出てきたという。
『Among Us』(2018年)も『グノーシア』(2019年)にも言及がない。それどころか、これらのゲームの発表以前の企画だったらしい。しかし同時期にこれらの作品が作られたのは、奇妙な偶然ではある。
というわけで、職業柄、アニメを見てもシナリオばかり気になるのだが、本作のビジュアルについても言及しておこう。
天野喜孝の特徴的ビジュアルがクセになる。デザイナーとしての本領発揮
天野喜孝といえば、(個人的に)「どう考えても3D化に向いてなさそうな絵ランキング」があったら3位以内に入りそうだが……その心配通り、かなり食い合わせが悪く感じた。水墨画や日本画のような天野喜孝の淡くかすれたタッチは、3DCGがもっとも苦手とするところだろう。
しかし……時間が経過すると、「あれ? これなんかディズニーアニメとかで見た気がするな……」というところまで慣れる。4話目くらいになると、「むしろ見分けやすいな」くらいまで行く。
最初の「天野絵」というバイアスが抜けて「キャラクターデザイン」の要素が前面に出てくると、「海外クリエイターが作ったなんか個性の強いアニメ」くらいまでの感覚にチューニングされる。このあたりはさすがである。
あと、宇宙船のデザインが有機でファンタジックなので、「これ重力どうなってんだろ」とか「どういう科学法則なんだ」とかいう野暮なツッコミをキャンセルする効果があるあたりも全体的に「デザイナー」天野喜孝の才能を再確認させる仕事になっている(編注:キャラクター、宇宙船その他のデザインは天野喜孝氏のビジュアル案をもとに株式会社ファイブが展開、モデリングを行っている)。こうした細かいポイントに気づくと、やはりすごいなと関心してしまう。
Netflixで配信されてから3カ月以上経過するが、もっと多くの人にぜひ観てほしいこの作品。それほど長くないので一気見推奨。
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