Netflixで2024年11月22日から独占配信中の映画『ピアノ・レッスン』。ピュリッツァー賞を受賞したオーガスト・ウィルソンの同名戯曲が原作で、家宝のピアノをめぐって家族が対立する様を描きます。「黒人の再起」をテーマにしつつも、家族について考えさせられる、普遍性を持った作品です。ヒューマンドラマでありながら、ホラー要素もある面白い映画。その魅力を紹介します。
※一部Netflix映画『ピアノ・レッスン』のネタバレを含みます。同じタイトルの映画『ピアノ・レッスン』(1993年/ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテルなど)とは別作品です。
目次
Netflix映画『ピアノ・レッスン』のあらすじ
1930年代の、アフリカ系アメリカ人に対する差別が色濃い時代のアメリカ。青年ボーイ・ウィリーは、親友のライモンとミシシッピからピッツバーグにやって来ます。目的は白人の奴隷支配者「サター」が所有していた土地を買うため、お金をつくること。
トラックの荷台にある大量のスイカと、ピッツバーグの姉の家にある、家宝のピアノを売ろうとします。姉・バーニースはピアノの売却に反対。叔父たちも巻き込み、ピアノとサターの亡霊をめぐって姉弟は対立します。
Netflix映画『ピアノ・レッスン』の見どころ
Netflix映画『ピアノ・レッスン』は俳優・監督のデンゼル・ワシントンがトッド・ブラックとともにプロデューサーを務めました。監督・共同脚本はマルコム・ワシントン、脚本はカティア・ワシントン、主演はジョン・デビッド・ワシントン……と、デンゼルの子どもたちが担当。家族でつくられた作品なんですね。
デンゼル・ワシントンは劇作家オーガスト・ウィルソンの作品を映画化し続けており、アカデミー助演女優賞『マ・レイニーのブラックボトム』(Netflix映画)、『フェンス』に続く3作目が『ピアノ・レッスン』。
名優サミュエル・L・ジャクソンなど、舞台版でも多くの役者が同じ役を演じています。舞台にはあったセリフを代わりに動きで表現するなど、映画ならではの表現に仕上がっています。
音と色へのこだわり。劇伴は名匠デスプラ
監督のマルコム・ワシントンは、『ピアノ・レッスン』を「黒人の再起の物語」と捉え、アフリカ系アメリカ人を象徴する赤・白・青の色を取り入れたといいます。水・火・土・風など自然界の要素を表しているとのこと。これらの色が効果的に出てくるのが、冒頭の花火のシーン。ボーイ・ウィリーたち家族にとって大事なピアノを父ボーイ・チャールズたちがサターの元から取り戻すシーンで使われます。
マルコム監督は「音楽を作品の中心に置いた」としていますが、特に後半の展開の効果音・劇伴の共演はすばらしいものがあります。音楽は『グランド・ブタペスト・ホテル』『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を受賞しているアレクサンドル・デスプラが担当。当時の黒人歌や労働歌に加え、現代的な音楽も入る演出が見事です。
姉/弟それぞれに理屈がある
家宝であるピアノには、祖母や父の顔、奴隷の歴史が刻まれています。バーニースとボーイ・ウィリー姉弟の父ボーイ・チャールズたちが、支配者サターから命がけで奪い返したもの。父はピアノがきっかけで亡くなっていて、母が想いを強くこめて磨いたものだからこそ、バーニースはピアノを弾けない。
一方でボーイ・ウィリーは、祖先からの遺産を売ることで土地と種を手に入れ、自由になろうとしています。ボーイ・ウィリーは「土は風で飛ばされる。土地は俺らを生き残らせる」という父の言葉を強く覚えているのです。
家族を思うからこそ対立する。普遍的な物語
『ピアノ・レッスン』で描かれているのは、今も残り続ける黒人差別や歴史です。家父長制や女性差別の問題でもある。一方で、どの国、どの家にもありそうな普遍的な家族の問題を扱っています。
ボーイ・ウィリーは白人の支配から自由になるために、ピアノを売ろうとする。バーニースは今までの歴史と信仰、安全な暮らしを大切にするためにピアノを売らない。
どちらが正しい……というより、どちらも正しいのではないか、と思わされます。今は分断、価値観が揺らぐ時代ですが「家族を大切に思うがゆえに、すれ違う」というのは、どこの家でも起こっているような気がするのです。違う正義の衝突ではなく、どう着地点を見いだすべきか考えさせられます。
『ピアノ・レッスン』はほとんどドーカーの家の中を中心に展開しますが、見応えがあります。家族の会話劇であり、ヒューマンドラマでありつつ「白人の支配」の象徴=サターの亡霊との格闘というホラー要素もある、ユニークな映画です。
Netflix映画『ピアノ・レッスン』の登場人物(キャスト)
ボーイ・ウィリー(ジョン・デヴィッド・ワシントン)
土地を買うため家宝のピアノを売ろうと、ミシシッピからピッツバーグにやって来る。ケンカはするものの、姉のバーニースや家族を愛している。
ボーイ・ウィリー役のジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの長男で俳優。元アメリカンフットボール選手で、俳優としては9歳のときに『マルコムX』に出演。『ブラック・クランズマン』『TENET』など話題作に出演しています。
ボーイ・ウィリーのまくし立てる演技は圧巻で、独特のリズムがクセになってきます。
バーニース(ダニエル・デッドワイラー)
夫クローリーを失ったあと娘マリーサを育てるため、叔父のドーカーの家で世話になっている。敬虔なキリスト教徒で、家族を大切に思いピアノを守りぬこうとする。
バーニース役のダニエル・デッドワイラーはアフリカ系アメリカ人による公民権運動を前進させた「エメット・ティル事件」の伝記映画『ティル』で第31回全米映画俳優組合賞などを受賞しています。本作でのたくましくもはかない演技が魅力的です。
ドーカー(サミュエル・L・ジャクソン)
ボーイ・ウィリーたちにとっては叔父にあたり、物語開始前にミシシッピからピッツバーグへと移住した。鉄道員として働き成功するも、不安定な黒人の身分や家族の状況になかば諦めも持っている。
サミュエル・L・ジャクソンは『星の王子 ニューヨークへ行く』『ジュラシック・パーク』『パルプ・フィクション』『スター・ウォーズ』シリーズ『アベンジャーズ』シリーズなど数々の作品に出演する名優です。他の作品に比べ、やや弱気なおじいさん役で珍しい姿が見られます。
ライモン(レイ・フィッシャー)
ボーイ・ウィリーの友人で、一緒にスイカを売りにトラックを飛ばしてピッツバーグまでやってくる。
レイ・フィッシャーはDCユニバースのヒーロー「ビクター・ストーン(サイボーグ)」役や、Netflix映画『REBEL MOON』出演などで知られる俳優です。ライモンのおっとりした雰囲気は作品の中でも一抹の救いだったりします。
・関連記事:名SF監督の力作、Netflix映画『REBEL MOON パート1:炎の子』
エイヴリー(コーリー・ホーキンズ)
バーニースに求婚し続けている、説教師(牧師や新譜と違って聖職者の資格はないもののキリスト教・聖書の教えを伝える人)。
コーリー・ホーキンズは俳優・歌手。『24:レガシー』で主演を務め、『キングコング:髑髏島の巨神』などに出演しています。若き日のエディ・マーフィーのような雰囲気があります。
ワイニング(マイケル・ポッツ)
ボーイ・ウィリーたちの叔父で、かつてはピアニストとして活動していた。弟のドーカーの家に来ては酒を飲んでしゃべり続ける。
ワイニング役のマイケル・ポッツは『陰謀のセオリー』や『LAW&ORDER』などのテレビシリーズ、『マ・レイニーのブラックボトム』などに出演する俳優です。冗談めかした口調や身振りがリズミカルな演技が魅力的。
まとめ
Netflix映画『ピアノ・レッスン』はアフリカ系アメリカ人の歴史をめぐる物語ですが、家族の問題を描いた普遍性を持った映画です。美しい映像やキャストの迫力の演技、意外な展開をぜひ楽しんでください。
キャストと監督・脚本家・プロデューサーが作品について語る『ピアノ・レッスン:その偉業と精神』も見応えがあるのでおすすめです。
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