Netflix「クィア・アイ」の魅力とは?ファブ5が内面も外見もゴーシャスに改造

『クィア・アイ』はNetflixで記事公開時点ではシーズン5まで配信中のリアリティ番組。
「ファブ5」と呼ばれるセクシュアルマイノリティの5人がアメリカ各地を周り、悩める男女の外見・内面を約1週間で変化させていきます。
シーズン6が2021年12月31日から配信予定。とにかく観ているとスッキリして前向きになれる番組なので、「変わってみたい」と考える人におすすめ。

『クィア・アイ』と「ファブ5」とは?

『クィア・アイ』の「ファブ5(fabulous5)」はフード・ワイン、ファッション、美容、インテリア、カルチャーなどそれぞれ得意分野を持った5人。全員がゲイ、フリュイド(流動的)、ノンバイナリー(自身の性自認や性表現に男女の枠組みを用いない)の セクシュアルマイノリティ 。受けてきた差別の経験、成長して得た人生訓、起業・仕事のノウハウを惜しみなく解放し「ヒーロー」と呼ばれるさまざまな悩みを持ち、自信を失った依頼人の人生を変えていきます。

Netflix『クィア・アイ』はリブート版

Netflixシリーズ『クィア・アイ』は2003~2007年に放映されたテレビ番組『Queer Eye for the Straight Guy』(原題)のリブート(再始動)版。前作はニューヨークのストレートの男性だけでしたが、今作は全米の州の広い志向・嗜好を持つ人がヒーローに選ばれています。

「クィア(Queer)」とは「風変わりな」「奇妙な」といった意味で、オリジナル版からの(エグゼクティブ)プロデューサーであるデヴィッド・コリンズによれば「侮蔑的な意味を持たされたその言葉を取り返し、自分たちのものにしたかった」とのこと(『QUEER EYE: LOVE YOURSELF LOVE YOUR LIFE』オークラ出版 より)。
クィア・アイは全世界で社会現象になり、「テレビ界のアカデミー賞」といわれるエミー賞を数回受賞。

2021年10月1日には、なんとレゴ『クィア・アイ:ファブ5のロフト』が発売されました(筆者も思わず購入)。「ロフト」とは毎シーズン、ファブ5が作戦を練る「秘密基地」のような場所。監修にはインテリア担当のボビーが関わっているので、再現度や作り込みがものすごいです。番組にハマった方はぜひチェックしてみてください。

Netflixシリーズ『クィア・アイ』のキャスト

『クィア・アイ』の魅力はまず何と言っても、ファブ5のキャラクター。スカウトされたタン以外はリブートに際しオーディションで選ばれたメンバー。選考の途中で5人は意気投合し、チャットのルームに「ファブ5」という名前をつけ合格前から仲が良かったそう。
個性あふれるファブ5のメンバーを紹介します。

アントニ・ポロウスキ(フード・ワイン担当)

アントニは元・モデル、俳優。ポーランド系のカナダ人でモントリオールやニューヨークのレストランで働いた経験を持ち、オリジナル版『クィア・アイ』のフード・ワイン担当テッド・アレンのパーソナルシェフ兼弟子になりました。
毎回ヒーローのキッチンや冷蔵庫をチェックしてニオイを嗅ぐのが恒例。好きな料理や思い出の味をヒアリングし、料理や食での関係づくりを優しくガイドします。かなり涙もろいです。味のあるTシャツに注目。
https://www.instagram.com/antoni/channel/

タン・フランス(ファッション担当)

タン・フランスはパキスタン系のイギリス人で、現在はソルトレイクシティを拠点としています。大手ファストブランドの店員などを経てファッションデザイナーとして独立。「キングダム&ステート」などのレディースブランドを起業し、売却。これから長い休暇に入ろうというところ、スカウトを受け『クィア・アイ』に関わることに。イギリスなまりの率直な物言いやユーモアが特徴。タンはシャツの正面を少しタックインして後ろは出す「フレンチタック」をヒーローに勧めることが多く、ファンには一時期この番組の影響で流行したそう。
https://www.instagram.com/tanfrance/channel/

ジョナサン・ヴァン・ネス(ヘアメイク担当)

ジョナサン・ヴァン・ネスはファブ5の美容全般担当。L.A.を拠点とするヘアスタイリスト、サロンのオーナーです。ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の感想を語りまくるポッドキャスト『ゲイ・オブ・スローンズ』で有名に。イリノイ州の高校時代は(当時)学校初の男性チアリーダーになったそう。本人いわく「ノンバイナリーの妖精」で、明るくチャーミングなムードメーカー。Tシャツとジーンズにハイヒールを合わせるなど、ジェンダーやルールにとらわれずファッションを楽しむ姿が魅力的。
https://www.instagram.com/jvn/channel/

ボビー・バーク(インテリア担当)

ボビー・バークはL.A.を拠点とするインテリアデザイナー。ミズーリ州の小さな町の厳格な家に育ち、周囲が敬虔なクリスチャンが多かったことからゲイであることに深く悩んだそう。15歳のとき半ば家出する形でわずかなお金だけを手にニューヨークへ移住。ホームレスやアルバイトの期間を経て大手インテリアショップで勤務。自身のブランド「ボビー・バーク・ホーム」で成功を収め、各地の放送局の番組にデザインの専門家として出演しています。
リフォームもDIYも得意で自ら手を動かしますが、ボビーに関しては与えられた時間が72時間と決まっているそうで他のメンバーより家での作業が多め。
https://www.instagram.com/bobby/

カラモ・ブラウン(カルチャー担当)

カラモ・ブラウンはファブ5のカルチャー担当。「ヒーロー」の心をカウンセリングで紐解き、ロッククライミングや因縁の相手との対話の場などイベントをセッティングします。
カラモはMTVのリアリティ番組『ザ・リアルワールド』などで有名。リアリティ番組でアメリカ史上初めて、ゲイであることを公表したアフリカ系アメリカ人。自分に息子がいたことを後に知り、若くしてシングルファザーに。後に異父弟も養子にし、ソーシャルワーカーになるため一度芸能界を引退した経験を持ちます。
以前はオバマ政権にLGBTQ+問題や放課後サポートについて提言するなどアクティビストとしても活躍。カラモの「LAドジャース」の帽子(ニューエラ)のカラーバリエーションはすさまじく、ボマージャケットも300枚近く持っているのだとか。
https://www.instagram.com/karamo/

『クィア・アイ』の魅力とは?

センスが良く、内面まで磨けるゴージャスな改造計画

日本でも一般人の髪型やファッション、住宅などを改造する番組はありますが、『クィア・アイ』がすごいのは衣食住+内面すべてをまるっと変えてしまうこと(それもゴージャスに)。

例えばシーズン3・エピソード3の「ジョーンズBBQ」の回。娘(姪)の学費のために高齢の体にムチ打ちながら伝統のバーベキュー店を切り盛りするジョーンズ姉妹がヒーロー。ファブ5は店舗の改装、ロゴのリデザイン、BBQソースを瓶詰めして商品化して売り出すなど「父から継いだ味を残したい」「労力を下げて収益を上げたい」という願い両方を一気に叶えます。

毎回当たり前のようにワードローブの見た目も中身もすべて入れ変えてくれますし、起業のサポートをしたり、最新の冷蔵庫や家電にまるっと変えてくれたり……観ているこちらも夢見る感覚にさせてくれるのです。

ありのままを受け入れる姿に元気づけられる

シーズン1・エピソード1の冒頭で、タンはこう語ります。
“The original show was fighting for tolerance. Our fight is for acceptance. ”
(「前作は“寛容”のために戦った。僕らは“受容”のために戦う」)

「寛容」や「受容」はインクルーシブ(包摂的)な社会のキーワード。はじめから寛容なものにあえて寛容とはいわないので、寛容は実は不寛容から始まるともいわれます。
有言実行と言うべきで、ファブ5は「受容」=まず受け入れることを実践しています。

ファブ5はクライアント本人がふくよかな体型を気にしていても「痩せよう」など決して言わず、その状態こそ「ゴージャス」だと肯定します。そして今の良さをより引き出す方法を探します。
観ていると相手を否定せず受け入れるファブ5に元気づけられます。

『クィア・アイ』のおすすめエピソード

『クィア・アイ』はどの回も発見や感動がありますが、ここではおすすめエピソードを3つに絞ってご紹介しましょう。

シーズン1・エピソード1「ブサイクは治らない?」

トム・ジャクソンは毎週火曜日、引退したレトロカー好きの仲間と食事するのが楽しみ。過去に3度離婚を経験し、その後もデートで失敗したせいでひどく自信を失っていました。「いくら見た目がよくなってもブサイクは治らない」と言うトムをファブ5は「それは禁句、二度と言わないで!」と叱ります。トムが変身していく様子と、別れの場面が感動的です。
ちなみにファッション担当のタンによればキャストが集合したのはこの回が初めてで、タンは他のメンバーとは違い、テレビカメラに映るのも初めてだったそうです(タン・フランス/訳・安達眞弓『僕は僕のままで』集英社 より)。

シーズン2・エピソード1「ゲイに神のご加護を」

熱心なキリスト教徒「ママ・タミー」は愛情と思いやりに溢れ、地域のために活動し、周囲の人から尊敬と愛情を向けられています。
ただ他者に奉仕するばかりで、自分の家は散らかりっぱなし。服装もあまり気にかけません。ゲイの息子を誇りに思いつつも教会との関係にも悩んでいます。ファブ5は「他の人を愛すように自分を愛して」と言います。

過去に拒絶されたことで教会が許せなかったボビーがコミュニティセンターを素敵に仕上げるエピソードも印象的。ママ・タミーはファブ5との出会いを経て、教会や地域の人々に「神を愛すると言う人が、隣にいる人を愛せないなんておかしい」と語りかけ息子のことをゲイと紹介できるまでになります。

『クィア・アイ in Japan!』エピソード1「自分主演ローマの休日」

続いては日本が舞台のスペシャルシーズン、『クィア・アイ in Japan!』のエピソード1。自宅で在宅ホスピスを営む佐久間洋子さんの夢は、いつか恋に落ちること。オードリー・ヘップバーンに憧れを抱きます。ただ入居者に自分の寝室を提供して自身はキッチンの机の下で寝るなど、なかなかセルフケアの時間が持てていませんでした。

洋子さんは「他人にたくさん喜びを与えるときは自分にも喜びを与えるべき」というカラモの言葉にハッとさせられます。

洋子さんは初めて会った5人に「身を任せていいんだ」と思い、自分の気持ちがオープンにできたと言います。ファブ5が受容の姿勢でいたからこそ、洋子さんもそうなれたのかもしれません。

すべてのエピソードに共通するファブ5のアドバイスは、まず自分自身を受容する(受け入れる)こと。エピソード1で語られたテーマはシーズンを通して貫かれています。

※ちなみに奉仕精神に溢れるママ・タミーと洋子さんのエピソードは人気になり、また多くの共通点を持つ二人は後に特別企画で出会っています。

年末年始はNetflix『クィア・アイ』で家を楽しむヒントを

『クィア・アイ』を観ていると、洋服ダンスを整理したり、模様替えしたくなるはず。服やインテリアや生活習慣など、どんなものが好きで、どんな人生を歩んできたのかがあらわれるんだなと思います。でもそれを人に見られるのを恐れず、自分の内面を受容して外見を変えてみよう、家を楽しもう、というのがファブ5のメッセージ。

『クィア・アイ』シーズン6はテキサスが舞台です。1回1時間弱で1話完結なので観やすく、旅行気分も味わえるので『クィア・アイ』『クィア・アイ in Japan!』ぜひ観てみてください。

【Netflixシリーズ『クィア・アイ』独占配信中】


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