今ではすっかり生活に根ざしたサービスとなった、音楽のサブスクリプション。Netflixで配信中の『ザ・プレイリスト』は、そんな音楽サブスクの雄「Spotify」の創業や葛藤をテーマにした海外ドラマ。ノンフィクションの原作を元にしたフィクションです。
音楽の違法ダウンロードが横行していた時代にレコード会社との権利を整理し、合法的に音楽をストリーミングできるように奮闘した創業者ダニエル・エクたちの軌跡を描きます。
スタートアップを舞台にした秀逸な「お仕事」ドラマで、仕事や働き方を考えさせられつつ、観ているとアイデアや元気をもらえる一作です。
※この記事は『ザ・プレイリスト』の一部ネタバレを含みます
目次
Netflixシリーズ『ザ・プレイリスト』のあらすじ
2006年のスウェーデン、ストックホルム。ダニエル・エクは優秀なプログラマーだったが、不採用の腹いせにGoogleをハッキングするような危うさもあった。ダニエルは会社を辞め、起業のアイデアを練る。母が大事にためているクーポン付きチラシをヒントに広告会社をまず創設すると、早々に会社を売却。
次にダニエルは音楽業界に目をつける。当時はスウェーデンをはじめ世界中で海賊版サイト「パイレート・ベイ」やP2Pソフトでの違法音楽ダウンロードが横行していた。ダニエルは出資者を集め、大手レコード会社重役のスンディンや弁護士・アーティストなどを巻き込みSpotifyのサービスを立ち上げ、拡大していく。
1話ごとに視点が変わる工夫が面白さを加速する
Netflixシリーズ『ザ・プレイリスト』は『Spotify 新しいコンテンツ王国の誕生』(スベン・カールソンほか/ダイヤモンド社)を原作としたフィクション。Spotify創業者のダニエル・エク、ソニー・スウェーデンの元社長スンディンなど実在の人物と事件をモデルに、Spotifyの創業から成功、葛藤を描きます。
『ザ・プレイリスト』が面白いのは1話ごとに主人公(視点)が変わること。
- ダニエル(Spotify創業者)
- スンディン(ソニー→ユニバーサルに転職したレコード会社重役)
- ペトラ(レコード会社との権利関係を整理した弁護士、法務担当)
- アンドレアス(CTOを務めた優秀なエンジニア)
- ロレンソン(投資家・共同創業者)
- ボビー・T(ダニエルのおさななじみのアーティスト)
この工夫により「あのときダニエルは冷静だったように見えてものすごく動揺していたんだ」「簡単に資金が得られたように見えたけれどロレンソンが裏で相当がんばっていたんだ」など違う視点で見られるのが面白いのです。
また同時に複数の視点で描くことで「音楽サブスクは誰を幸せにしたのか?」を考えさせられます。
海賊船か、黒船か。音楽界にエンジニアが乗り込む
天才プログラマーながら社会と折り合いをつけられずにいたダニエルは、広告サービスを広告会社のロレンソンに売却し、意気投合してSpotifyの創業を目指します。
ダニエルが音楽業界へ目をつけたのは、2000年代にスウェーデン発の違法音楽サイト「パイレート・ベイ」が大流行していたのが一つのきっかけ。レコード会社はパイレート・ベイへの訴訟に追われ、さらに閉鎖に反対するユーザーたちからいわれなき中傷を受けていました。当時すでに若者たちは音楽を聴く際にレコードを買わず、ダウンロードする習慣があったわけです。
ダニエルとロレンソンはWeb広告について熟知しており、多大な広告収入を得ていた「海賊船」パイレート・ベイの逆を行き、合法的に音楽が自由に聴けるプラットフォームの「黒船」を目指します。
リストがめちゃくちゃで検索性が低かったパイレート・ベイに対し、プレイリストで整理できる機能や広告のノウハウを活かしたレコメンド(おすすめ)機能。ダウンロードが遅い当時のP2Pソフトや違法サイトに対して、クリック一つでタイムラグなく再生できる環境をつくろうとしたのです。
時代の変化に抗うか、適応するか。レコード会社の苦しい立場
ユーザーには無料で音楽を聴けるようにし、再生に応じて得られる広告収入をレコード会社に配分する。ダニエルとロレンソンはアーティストにも利があることをPRし、音楽権利者協会やレコード会社にプレゼンをしに行くも、なかなか良い反応を得られません。
当時は「無料=盗まれる」意識が音楽業界にはあり、ソニー・ミュージック・スウェーデンの代表だったスンディンも、ダニエルの「無料」の言葉に憤慨し取り合いません。
それもそのはず、スンディンにも事情がありました。年々売上が落ち、パイレート・ベイがスウェーデン発のため、アメリカの本部からは「パイレート・ベイをなんとか潰せ」といわれるし、泣く泣く大切な従業員を解雇をしなければいけない状況にもありました。さらに息子や友人までもがパイレート・ベイを利用して音楽を聴いている始末に頭を抱えます。
音楽サブスクは誰にとって幸せなサービスか?
一方、ロレンソンは北欧一の弁護士事務所から優秀な女性・ペトラを法務担当として引き抜きます。「無料」にこだわるダニエルやアンドレアスに対し、「レコード会社や銀行に示しがつかない」と冷静にペイウォール(一部のコンテンツを有料にする)を提案しますが、突っぱねられます。
そこから「自分のプレイリストを持ち続けられるならお金を払うユーザーがいるのでは?」と無料会員とプレミアム会員の階層をつくる「フリーミアム」の発想が出てきて、Spotifyはより前進。
しかし理想を追求するエンジニア・アンドレアスは納得がいかない。そのアンドレアスもダニエルから「ほぼゼロ秒で音楽を再生させろ」と無理難題に思える課題を与えられています。
優秀なエンジニアたちを稼働させ開発を続けるための莫大な資金やマーケティングの人集めにロレンソンは奔走します。
最後の6話目「If」のストーリーでは、2025年ごろに時代が飛び、ダニエルの幼馴染みでもあるアーティスト「ボビー・T」が、、」Spotifyで月に数十万再生されても家賃の支払いすら苦労する身であることをSNSで暴露します。
Spotifyではユーザーへの支払い金額は、すべてのアーティストの再生数で割って報酬を計算するので、大手の再生回数の多いアーティストに分配が多くいく仕組みになっているのです。そしてレコード会社には70%が入りますが、肝心のアーティストに報酬は行き届いていないかもしれないとも。
ユーザーが音楽にアクセスする自由さを実現し、ダニエルたちは億万長者になりますが、果たして音楽にかかわる人たちがSpotifyでどこまで幸せになったか?を考えさせられます。
仲間が増えるワクワク感と、根底にある「怒り」を昇華した秀逸な「お仕事モノ」
『ザ・プレイリスト』にはスタートアップならではのワクワク感があります。アンドレアスたちエンジニアや、優秀な弁護士ペトラや敵だった弁護士ケン・パークスまでもが仲間に加わるような、少年漫画的な高揚感。
またダニエルたちをはじめ、この作品の根底には「怒り」があるのではと感じました。
ダニエルやアンドレアスたちITエンジニアたちは旧態依然とした、変化しない社会への怒りを感じている。
ロレンソンはADHD(注意欠如・多動症)的な自身の居場所のなさに、ペトラは法曹界の男性社会、封建的な在り方に。ボビー・TはSpotifyやシステムに搾取されることに。
スンディンは無料で音楽を聴く人たちを「盗っ人」だと思い、強く怒ります。それをスンディンの妻が「歳をとらないで」と諫めるシーンが印象的でした。かつてはそういうパンクやロックに夢中になったんじゃないの、と。アーティストやレコード会社が精魂込めてつくった曲を無料で聴かれるのを怒るのは当然。一方で、息子たち若い世代がなぜそうしているのか、デジタルやインターネットを機会と捉えられないか。
その後スンディンがSpotifyのダニエルたちと和解し、ペトラの奮闘もあってレコード会社の版権整理に協力したことで、Spotifyの構想が実現したともいえます。
怒りや疑問を、一度理解するエネルギーに傾ける。若者の可能性にかけるかっこいい大人が時代を前に進めるのかもしれない……と『ザ・プレイリスト』を観ていて熱くなりました。
スンディンだけでなく、出てくる大人たちの切り返しが冷静かつ知的で、お仕事モノとしてとても学びがある作品です。
まとめ
Spotifyが登場した当時は「権利者に許可を取った音楽サービスなんて考えられない」と衝撃を受けた記憶があります。それを仕組み化し、すごいスピードで成長したSpotify。どうやってその情熱と力を揃えていったのか、『ザ・プレイリスト』は多角的な視点でそれを描く秀逸な海外ドラマです。全6話と見やすいので、ぜひチェックしてみてください。
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