重厚な再現ドラマで戦国の動乱を覗き見る。『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』

エイジ・オブ・サムライ メインビジュアル

日本の各地で戦いが繰り広げられた戦国時代。戦国大名は政略を張り巡らし、武家社会の成立以降で最も混沌を極めた時代ともいわれます。2021年2月から配信されているNetflixシリーズ『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の動向を中心に、約140年間にわたる戦国時代がどのように終焉(しゅうえん)を迎えたのか、再現ドラマに歴史学者たちの解説を交えながら紹介します。天下統一という大義のもとで繰り広げられた凄惨な行いも包み隠さず伝え、狂乱の時代の現実を知ることができます。この記事ではNetflixシリーズ『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』の見どころを紹介します。

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』血に染められた戦国時代の現実

エイジ・オブ・サムライ 刀を握る織田信長

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』は、16世紀後半、室町幕府が求心力を失い、全国各地で戦いが繰り広げられた無政府状態の日本を、壮大な再現ドラマと詳細な解説で紹介しています。製作はカナダのケーブルテレビ局であるスミソニアンチャンネルとクリーム・プロダクションが共同で行っており、カナダ国内では「The CAFTCAD (The Canadian Alliance for Film and Television Costume Arts and Design) 」の衣装部門をはじめ、3つの映像祭にノミネートされるなど高い評価を獲得しています。
日本でもさまざまな作品で描かれている戦国時代ですが、本作ではシリアスタッチな演出を徹底することで、戦だけでなく虐殺や騙し合うことが常態化していた時代の空気を生々しいまでに伝えています。英語版のオリジナルではカナダで活躍する日系俳優のヒロ・カナガワのナレーションで物語をナビゲートします。

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』の登場人物

織田信長(羽田昌義)

エイジ・オブ・サムライ 織田信長

織田信長は1534年、尾張国(現在の愛知県)で織田信秀の嫡男として誕生。若い頃は破天荒なふるまいから“うつけ者”と言われるなど周囲から顰蹙(ひんしゅく)を買っていました。しかし、19歳で家督を継いでからは早急に尾張国を平定し、桶狭間の戦いで“海道一の弓取り”と謳われた名将・今川義元を打ち破るなど勢力を拡大。1568年には室町幕府の正統後継者・足利義昭をサポートするという名目で京都に進出を果たします。その後は義昭を追放し、天下取りに向けて動き出しますが、1582年に明智光秀が起こした本能寺の変により波乱の生涯に幕を閉じます。シーズン冒頭の主役である信長は戦国の世に革命をもたらした人物として紹介されますが、一方で目的のためには手段を選ばない残忍な一面も描かれています。

豊臣秀吉(小坂正三)

エイジ・オブ・サムライ 豊臣秀吉

1537年、尾張国で下級武士(もしくは農民)の子として生まれたと言われる豊臣秀吉は、実力主義を掲げていた信長のもと、類まれなる才覚で足軽から織田家の有力武将へとスピード出世を果たします。本能寺の変で信長が倒れると主君の仇である明智光秀を討ち、賤ヶ岳の戦いで柴田勝家を破ったことで信長の後継者の地位を得ました。1585年には武士として初めて関白に就任し、1590年に北条氏を滅亡させたことで名実ともに天下統一を達成。全国の大名を手中に収めた秀吉は、土地の権利関係を整理し、効率的に年貢を徴収するための検地や刀狩り、身分統制令などを実施。武家社会の基盤を強固なものにしました。1598年、5月頃から急激に病を悪化させた秀吉は、同年9月に徳川家康をはじめとする五大老・五奉行に跡継ぎの秀頼を託してこの世を去りました。

徳川家康(ハヤテ)

三河岡崎城主・松平広忠の長男として1542年に誕生した徳川家康は、わずか6歳で織田家の人質となり、2年後には今川義元の人質として駿府(現在の静岡県中部)に送られます。手厚い保護を受け今川家の重臣への道を歩んでいた家康でしたが、桶狭間の戦いで義元が討ち取られると清州同盟を締結して信長と合流。故郷である三河国(現在の愛知県東部)を統一し、織田信長との連合軍で武田家を滅ぼすなど武将としての地位を確固たるものにします。本能寺の変の後は信長の後継者の座を巡って豊臣秀吉と戦いますが最終的に講和し、豊臣家に臣従。秀吉の死後、1600年の関ヶ原の戦いでは激戦の末、豊臣家の家臣・石田三成率いる西軍を破って事実上、武家社会の支配者となります。その3年後には征夷大将軍の座を得て天下を統一し、江戸幕府を開きました。

伊達政宗(伊藤英明)

1567年、出羽国(現在の山形県・秋田県)で生まれた伊達政宗は、5歳の時に患った天然痘で右目の視力を失い、これが後に独眼竜と呼ばれる由縁となります。18歳で伊達家の当主となってからは東北での領土拡大を活発化させ、強豪であった葦名氏や畠山氏を打ち破って現在の福島県、山形県、宮城県にまたがる一大勢力を築き上げます。豊臣秀吉による天下統一後は紆余曲折を経て軍門に下りますが、小田原征伐では参加が遅れたことで仕置を受け、謀反の容疑で切腹させられた豊臣秀次との内通を疑われたりするなど、その関係は常に緊張をはらんでいました。秀吉の死後は徳川家康に付き、1601年に仙台藩を樹立すると治水事業や新田開発に取り組んで地域を発展させました。

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』の見どころ

戦国の世を生々しく伝える再現ドラマ

エイジ・オブ・サムライ 激しい戦場シーン

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』では織田信長・豊臣秀吉・徳川家康が権力を手にする過程を再現ドラマで紹介。迫力ある合戦シーンや権力闘争の様子が映画に匹敵するほどのクオリティで制作されています。オブラートに包まず伝える戦国の世は、まさに血で血を洗う戦場。武将たちが天下統一の野望に取り憑かれることで起こす狂気的な行動には英雄とは程遠い一面も垣間見られます。織田信長は鉄砲の導入や足軽の強化で戦のあり方を変えた革新性と敵対勢力の処刑を楽しむかのような残忍性を。豊臣秀吉については天下統一した後、朝鮮出兵で方向性を見誤って国力を大きく減退させた過程などを紹介します。ドラマパートは信長・秀吉・家康ら戦国三英傑を中心に描いていますが、伊達政宗については彼らと同等の扱いで登場し、戦国時代における存在感の大きさを象徴しています。

武人たちの野心を表現する俳優陣の名演技

エイジ・オブ・サムライ 武士同士の策略が交錯する

戦国の世を駆け抜ける武将役には、国内外で活躍する俳優たちが名を連ねています。織田信長役の羽田昌義は国内外のドラマ・映画で活躍する俳優で『ラスト サムライ』『47RONIN』『嫌われ松子の一生』など、数多くのヒット作に出演しています。豊臣秀吉役の小坂正三は大学卒業後に単身で渡米。2010年に映画デビューを果たし、その後も数多くのハリウッド作品に名を連ねています。徳川家康を演じるハヤテは日本のパルクールの先駆者で、アクション俳優や監督としても活躍しています。伊達正宗役の伊藤英明は『海猿』シリーズをはじめとした数々の作品で知られており、2020年にはハリウッドにも進出。今後のさらなる活躍が期待されています。彼らの重厚な演技が再現ドラマの緊張感を高め、中でも羽田昌義が演じる信長は、勇ましさと同時に表情や細かな動きで残忍性を表現。前半のキーパーソンとして大きな存在感を放っています。

権力闘争の構造を詳細に伝える歴史学者の解説

エイジ・オブ・サムライ 手紙を読む織田信長

ドラマパートと同じく『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』の重要な構成要素となっているのが日本史の専門家たちによるコメント。歴史学者・作家のスティーブン・ターンブル、NHKの大河ドラマ『真田丸』で時代考証を担当した歴史学者の丸島和洋、山梨学院大学の特任教授であるダレン・アッシュモア、日本文化に関する著作を持つノンフィクション作家のレスリー・ダウナーなど、国内外から歴史のスペシャリストたちが集結し、戦国時代の世相や武将たちの人間関係について解説します。
織田信長が家督を継ぐまでに織田信賢ら親族と繰り広げた戦い、豊臣秀吉が信長の後継者争いで柴田勝家と戦った際に陥ったピンチと勝機、伊賀忍者の発祥など、歴史ファンにとってはおなじみのエピソードも、その背景を詳細に伝えることで、より深く実状を知ることができます。

まとめ

『エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い』は、海外からの視点により、これまでの戦国時代を描いた映像作品にはなかったテイストを打ち出しています。日本が最も混乱していた時代の歴史を学べる一方、時代劇ドラマとしても重厚感を携えており、さまざまな層の日本史ファンが楽しめる作品となっています。

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