2023.09.06 ドキュメンタリー

Netflix『地球外生物の世界』専門家の考察から描かれる架空の惑星たち

ライター：伊東孝晃

2020年12月からNetflixで独占配信が開始された自然SFドキュメンタリー『地球外生物の世界』。「宇宙には、地球以外に生命の存在する星が必ず存在する」という仮説を打ち立て、CGで製作した架空の惑星を4つのエピソードで紹介。それぞれの星の特性を解説しながら、発想のもとになった地球上の自然や生物の生態についても学ぶことができます。
この記事ではNetflixシリーズ『地球外生物の世界』で登場する4つの惑星や地球上でのドキュメンタリーパートなど、注目すべきポイントについて紹介します。

科学的考証にもとづき未知の惑星を想像
美麗なCGで生み出された4つの太陽系外惑星
神秘に満ち溢れた地球の生態系
まとめ

科学的考証にもとづき未知の惑星を想像

Netflixシリーズ『地球外生物の世界』は、宇宙のどこかにいると考えられている未知の生物について検証し、地球外の惑星や生物の姿を想像し、表現しています。作中ではチリのパラナル天文台やアメリカ・カリフォルニア州のリック天文台など世界の名だたる宇宙観測施設が登場。歴史上で初めて太陽系外惑星を発見したディディエ・ケロー、NASAのナタリー・バターリャなど、天体物理学の最先端を進む学者たちが、自身の研究内容にもとづいて地球外の生命や未知の星々の存在について解説します。エピソード4「テラ」では、高度な文明を持った地球外生物について言及され、SFファンにとっては必見の内容となっており、視聴者の興味を刺激します。
イギリスでは配信直後から再生回数トップ10入りを果たし、経済誌の『フォーブス』や世界的なニュースサイト『SFGATE』など、さまざまなメディアで高い評価を獲得。英語版では『ホテル・ルワンダ』やNetflixシリーズ『ラチェッド』でも知られている俳優のソフィー・オコネドーがナレーションを担当しています。

美麗なCGで生み出された4つの太陽系外惑星

本作では、地球の自然環境をもとに4つの太陽系外惑星を想像し、CGによって描いています。それぞれの星に暮らす生物も、まるで本物かのような質感や躍動的な動きで表現されています。

アトラス

大きさ・重力の強さが地球の倍の惑星。大気が濃く浮力を生むため、大半の生態系は空中で展開されています。6枚の翼を持った草食動物・スカイブレイザーが空中に浮遊した胞子などを食料としています。風船上の体を浮かせて集団でスカイブレイザーを狩る捕食者や、幼体を狙う軟体動物も存在します。

ヤヌス

赤色矮星の周囲を公転している惑星。恒星の近くに軌道を持っていることから常に同じ面を固定する潮汐固定の状態にあり、一方は灼熱、もう一方は常に夜の状態となっています。その境界線上のわずかな土地を中心に生態系が展開され、主力生物であるペンタボットがさまざまな環境に適応して暮らしています。

エデン

2つ恒星の周囲を公転する惑星。豊富な太陽光や大気により、さまざまな種類の動植物が繁栄しています。メガネザルのような肉食動物が森の生活に適応し、最も進化を遂げています。しかし、捕食対象である草食動物が植物の毒に侵されていると、そこから寄生した菌に分解されるなど独自の生態系が構成されています。

テラ

誕生から90億年を超え、高度な科学文明を持つ惑星。知的生物は発達の末、脳と神経組織だけの形態となっており、ドーム内に設置された箱の中に生息しています。恒星の寿命が近づき、激しく燃えていることから惑星ごと焼き尽くされることが予想され、同じ恒星を持つ別の星（ニュー・テラ）への脱出計画が進められています。

神秘に満ち溢れた地球の生態系

作中では、宇宙への想像を広げる源流として地球の生態系に着目しています。作中ではCGで描かれる太陽系外惑星以上に、多様な地球の自然環境が紹介されており、エピソード2「ヤヌス」の冒頭に登場するエチオピアのダナキル窪地は、その最たるもの。地球上で最も熱く「地獄の門」の異名を持つこの火山地帯は、溶岩により形成された大地や硫黄や酸で変色した水面が、まるでSF映画の地球外惑星のような様相を呈しています。何者も生きられないと思われたこの地では近年、微生物の存在が確認され、地球外の環境に生命が存在する可能性を高めるものとして期待されています。他にも隕石の衝突跡といわれる湖や、高濃度の硫化水素を食料とするバクテリアが生息する洞窟など、想像上の太陽系外惑星と同じくらい不思議な地球のスポットを数多く覗き見ることができます。
タカの狩猟方法やサソリの毒による攻撃、カゲロウの生殖行動といった地球上の生物の生態が、太陽系外惑星の生物の造作に応用されているのも注目のポイントです。