選択肢で展開が変わるドラマNetflix『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』の秀逸さ

Netflix ブラックミラー MV

小説家・文筆家の海猫沢めろんさんが最もおすすめしたいというNetflix作品が『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』。人気の海外ドラマ『ブラック・ミラー』の特別編である『バンダースナッチ』はドラマでありながら、ゲームのように選択肢を選んで違う展開が楽しめるようになっています。実はこれまでも存在した「インタラクティブドラマ」との違いとは?
※本記事は『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』の一部ネタバレを含みます。

筆者が一番おすすめしたいNetflix 作品『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』

一生かかっても見きれないほどあるNetflix作品のなかで、一本だけ見るべきものを選ぶとしたら、この作品だ。

2011年から続く英国のテレビドラマ『ブラック・ミラー』の特別編である『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』は、2018年12月に公開されるや否やまたたくまにネットの話題をさらった。視聴者たちが驚いたのはドラマの内容もさることながら、その形式の意外さだった。

このドラマは、ただ見るだけではない。視聴者が選択肢を選んでゲームのように物語をすすめる「インタラクティブムービー」だ。

Netflixブラックミラー インタラクティブシーン

とにかくいますぐ観てほしい作品なのだが……すぐに観なかったあなたに、観たくなるよう『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』の面白さを解説したい。

『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』のあらすじ

Netflixブラックミラー 画像2

物語の舞台は1984年のイギリス。主人公である19歳のプログラマー、ステファンは幼少期に事故で母親を亡くし、父と二人で暮らしている。彼は家に閉じこもり、伝説的作家ジェローム・F・デイビイのゲームブック『バンダースナッチ』をもとにしたオリジナルソフトを開発中だった。ある日、人気ソフトハウスである「タッカーソフト」へそれを持ち込んだことから奇妙な事件が起こり始める。

やってみないと分からない面白さ

1984年といえばジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』を思い出すが、この年、アメリカではAppleがMacintoshを発売。日本では前年にファミリーコンピューターが大ブームとなり、世はまさにデジタルゲームの黎明期。この時代を忠実に再現したセットには、ニヤリとさせる小ネタが盛りだくさんなので注目を。


バンダースナッチ(英:Bandersnatch)とは、ルイス・キャロルの詩『ジャバウォックの詩』と『スナーク狩り』で言及される架空の生物で、謎めいた存在の象徴として配置されている。ルイス・キャロルといえば不思議の国のアリスが代表作だが、主人公はそのモチーフをなぞるように悪夢の国へ迷い込んでいく。

……と、まあ、あらすじを紹介したところでおもしろさの1割も伝わらない。なぜなら、さきほど述べたとおり、本作は視聴途中に現れる選択肢を選ぶことでストーリーが分岐する「インタラクティブ映画」であり、つまりは「ゲーム」に近いので、やってみないことには面白さが分からないのだ。

インタラクティブ映画とは何か?

「インタラクティブ映画」とは文字通りインタラクティブ=双方向性のある映画で、要するに視聴者が介入できるタイプの映画だ。具体的には、ストーリーの分岐を視聴者が選べるようになっているものが多い。ともかく何らかの形で、視聴者が作品に影響を及ぼすことができればインタラクティブと言える。
以下、大昔に書いたこの件に関する自分の文章を引用する。

1992年の12月。アメリカのローワー・マンハッタンの映画館で、ある一本の奇妙な映画が公開された。インターフィルム社が製作した『I’m Your Man』。わずか20分ほどのこの作品は、世界初の分岐する映画だった。座席のドリンクホルダーに備え付けられたピストル型のオモチャには緑、黄色、赤のボタンがあり、いくつかのシーンで観客がボタン投票をしてストーリーを決めることができる。同社代表のボブ・ビージャンは、この映画を「シネマ・ゲーム」と名付けて熱心に売り込んだ。その甲斐あってかインターフィルム社はこの作品が公開された後、同じような映画を二本製作している(ただし……すべて批評家にさんざん酷評され現在、同社は倒産)。

奇しくも、この映画が公開された92年といえば、日本で「弟切草」と、「同級生」が発売された年である。国産の分岐型ノベルゲーの代表作と、マルチエンドのギャルゲーの代表作が、同年に生まれているというのは後のビジュアルノベル(いわゆるエロゲ)の進化を考える上で興味深い偶然だが、遠く海を隔てた米国でも似たようなものが作られていたとは……。なぜこの時期に、分岐やマルチエンドなど、現実の複数性を意識させるモチーフが流行したのだろう? 気になって調べてみると、92年は多重人格の分析(これまた複数性をモロに表現)や、パソコン通信のユーザー拡大などのトピックがあり、その前年には湾岸戦争、ソ連の解体などが起き、バーチャルリアリティが話題になっている。ソ連の解体による冷戦というわかりやすい対立軸の消失、ブラウン管の向こうでテレビゲームみたいに銃弾が飛び交う湾岸戦争、技術による現実感覚の変容??現実の複数性が求められた背景には、大きな物語の揺らぎがあったのかも知れない。

『幼年期が終わった後に。 テレビゲーム評論集 2001-2012』宮昌太朗(発行:bootleg! books) 2015年刊行 解説より

今までは人気のなかったインタラクティブドラマ、その理由は?

この手のインタラクティブな作品は80〜90年代にかけてテレビで仕掛けられたことから、

「インタラクティブドラマ? なんか昔あったような子供だましの仕掛けだろ?」

そんな印象を持ってる人も少なくないだろうが、最近でも『ダンガンロンパ』シリーズでおなじみの小高和剛が、「これは映画なのか? ゲームなのか?」というキャッチコピーで発売した『Death Come True』など、映画とゲームの境界的作品はつくられ続けている。

しかし、残念ながらこのジャンルにおいてゲーム機でプレイする「ゲーム」に近い側のヒットはあれど、テレビや劇場で見る「映画」側に近い作品はほぼヒットした話を聞いたことがない。
理由は恐らく視聴者が「映画」にそれを求めていないからだ。

『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』のストーリーの面白さ、秀逸なインターフェイス

積極的にプレイする「ゲーム」とは違い、「映画」は圧倒的に受動的なメディアだ。中途半端にインタラクティブ要素があることがマイナスにしか働かない。ソファに座ってポテチを食べ、ビールを飲んでゲラゲラ笑いながら映像を見ていたい人にとって、わざわざコントローラーを操作するのは面倒でしかない。この文章の冒頭で「いいからさっさと見ろ」と言っているのに、誰も見ていないことがその証拠だ。人類はもはやワンクリックですら面倒なのだ。

それはそれで仕方ない。正直いうと、筆者もそっち側だった。
ところが『ブラック・ミラー:バンダースナッチ』を見終えて意見が変わった。『バンダースナッチ』は、これまでの弱点である作中時間と外の時間のずれや、インタラクティブである必然性がなかったり、そもそもストーリーがつまらない、などといった部分をかなりの水準でクリアしていたのだ。

まず選択肢の決定は時間制で、わざわざこっちを待ってくれない。つまり、映像内時間と現実時間にラグがほぼない。ぼやぼやしていたら勝手に話は進む。

選択肢を選ぶ形式自体にもちゃんと必然性がある。ストーリーが進むにつれて、作中小説である『バンダースナッチ』と、主人公が作るゲーム『バンダースナッチ』と、我々が鑑賞している映像作品『バンダースナッチ』が、三重のメタフィクションになっており、「選択肢」というシステムによってそれらがリンクしていることがわかる。

インターフェースも優れている。この手の作品はバッドエンドになろうが、視聴者はズルをしてでも結局はトゥルーエンドを見る。それを想定しているのか、バッドエンドになってもまた最初からやりなおし……ではなく、分岐の途中までダイジェストで連れて行ってくれる。やりなおしもたいして気にならなかった。

要するに、この映画はゲームとしても映画としても優れているのだ。
ぜひ素直に見てみてほしい。


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