神アニメ『サイバーパンク:エッジランナーズ』原作未プレイでも問題なし、今すぐ観るべし

サイバーパンク:エッジランナーズ メインビジュアル

『キッズ・リターン』『シティ・オブ・ゴッド』『mid90s ミッドナインティーズ』、不良少年たちの破滅と悲哀を描いた作品は数多くあるが、またひとつ傑作が現れた。
『サイバーパンク:エッジランナーズ』は近未来を描いたSFアニメでありながら、不正や不満が渦巻く現代のなにもかもをぶち壊したくなるような、ストレスを抱えた人々に寄り添う一瞬のドラッグめいた娯楽映像作品に仕上がっている。

『サイバーパンク:エッジランナーズ』のあらすじ。ディストピアを駆けるアンチヒーロー

サイバーパンク:エッジランナーズ 街の風景

物語はこんなふうに始まる。

近未来。巨大企業アラサカによって支配された、虚飾と欲望がはびこる都市ナイトシティ。資本主義の極北ともいえる、露骨なまでの格差社会に覆われた街だ。
私立教育機関「アカデミー」に通うデイヴィッド・マルティネスは優秀な生徒だが、貧困層出身ゆえにエリート揃いの学校では浮いている。息抜きの娯楽といえば、BD(ブレインダンス)と呼ばれるバーチャルリアリティムービー。これはただの映像ではない。誰かの経験を再現して楽しむ娯楽だ。誰もが身体をサイバー化し、力を手に入れられるこの時代では、体験者本人の経験すらもひとつのコンテンツとして消費されている。
しかし身体をサイバー化しすぎた人間は、その力の代償として精神を蝕まれサイバーサイコシスといわれる狂乱状態に陥る。

その日デイヴィッドがキメていたBDは、元軍人のジェームズ・ノリスがサイバーサイコシス状態で暴走した事件のものだった。サイバーサイコシス状態になった人間の主観映像ほどスリリングでヤバくてクールなものはない。
アカデミーに溶け込めずトラブルに見舞われるデイヴィッド。洗濯する金も家賃も払えないような暮らしの中、救急隊員の仕事をこなす母親グロリアは、息子がいつかアラサカの優秀な人材となってエリートの暮らしをすることを夢見ている。しかし、彼女は事故に巻き込まれて死ぬ。失意のなか、遺灰とともに自宅に戻ったデイヴィッドはグロリアの荷物のなかに見慣れぬインプラントデバイスを発見する。それはBDで見たジェームズ・ノリスにインストールされていた軍用インプラント「サンデヴィスタン」だった。友人である闇サイバー技術者、ドクにデイヴィッドは言う。
「こいつを俺にインストールしてくれ!」
圧倒的な力を手に入れたデイヴィッドはアカデミーからドロップアウトし、電車で出会った謎の女ルーシーと組んでスリの仕事にのめりこむ。しかし、彼女はとある犯罪組織のメンバーだった。デイヴィッドの人生は、それまでとはまったく別の危険な方向へと動き出す。

ディストピアを舞台にアンチヒーローがノーフューチャーな方向へ加速していくなかで、仲間との出会いと別れや恋や裏切り、そしてわずかな希望と夢が描かれる。その切実さはストリートに転がっているありふれた物語によくあるが、瞬きの間に消えてしまう類のものであり、だからこそ儚く輝いて見える。

作品ジャンルとしての「サイバーパンク」とは?

サイバーパンク:エッジランナーズ サイバーパンクな人たち

「サイバーパンク」とは80年代のSF界で起きたムーブメントだ。それは、これまでのSFがすべて古くさく見えてしまうような革新性に満ちていた。サイバー空間のスタイリッシュなガジェット、明るい希望などとはほど遠いノワールめいたナスティ(汚れた、雑多なさま)な世界観。そう、サイバーパンクの神髄とはノワールとナスティさにある。混沌とした世界。最低のロッカーとハッカーが反社会的な生活のなかでハードな人生を送る。それがサイバーパンクの新しさと懐かしさだった(ちなみに私が『零式』というタイトルのサイバーパンク小説を書いたとき、やはり同じようなテイストになった)。

しかし00年代前半には急速に輝きを失っていた。インターネットがインフラとなり、スマートフォンを持つようになった世界は80年代の想像力を遥かに追い越していた。
そんな時代のなかで、新しいサイバーパンクの世界を構築できた作品は『攻殻機動隊SAC』や『ゼーガペイン』、『BALDR FORCE』、『ニンジャスレイヤー』など、わずかしかなかった。

現実にも通ずる閉塞感と矛盾、懸命に生きること

サイバーパンク:エッジランナーズ デイヴィットとルーシー月面にて

『サイバーパンク:エッジランナーズ』は久しぶりに現れた骨太のサイバーパンク作品だが、新しくはない。むしろ懐かしさすら感じられる。にもかかわらず、そこには確かな時代性が備わっている。
たとえば、こういう部分——政府側と市民側、体制と反体制、内と外の区別がナイトシティにはほとんどない。政府のかわりに企業があり誰もその外に出られないままシステムの中でのみ生きられる。その場所からもっとも遠いのは「月」だが、それすらツアーの一環にすぎない。作中でナイトシティは「光の牢獄」と表現され、外の世界の描写はない。どこまでも牢獄が続くだけの世界——この光景は、誰にだって身に覚えがあるはずだ。

サイバーパンク:エッジランナーズ 仲間たち

国のインフラに乗っかって政府批判をし、資本主義を叩きながらスマホを使い、大企業のサーバに支えられたサービスに興じる。何もかもがだらしなく混じり合った「生活」に埋もれていく。そんなだらしなさにNOを突きつけて隠者になったり世捨て人になるのが、本当は崇高なやり方かもしれない。けれど、私はそんなふうに徹底できず、純粋にも生きられない矛盾と中途半端さと妥協に満ちた生が、否定されるモノだとは決して思わない。懸命に生きることが、汚れていると批判されていいはずがない。作品のなかで生きるキャラクターたちの葛藤に心を揺さぶられているとき、私はそれを確信した。彼らはかつて夜の世界に生きていた自分であり、死んでいった仲間たちによく似ていた。

なにが言いたいのかというと、つまりこの作品は最高だった。

「原作をやるべき」は無視!見たいときにすぐ見るべし

サイバーパンク:エッジランナーズ デイヴィットとルーシー2

この『サイバーパンク:エッジランナーズ』には、世界観を同じくするゲーム(『サイバーパンク2077』)が存在するが、アニメはこれ自体で独立したものなのでプレイしている必要はない。「『2077』もやらなければ本当の魅力がわからない」「いや、TRPG版もやるべきだ」などといった声があるだろうが無視していい。娯楽はお勉強ではない。そうした教条的態度はこの作品が表現しているパンクで反体制なものとは真逆のものだ。やりたければやればいい。それだけだ。右顧左眄(うこさべん)するな。パンクを貫け。So, get away another way to feel what you didn’t want yourself to know and let yourself go(Rosa Walton『I Really Want to Stay at Your House』より).

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