Netflix『リプリー』 エレガントなモノクロで描く 天才詐欺師の邪悪な野望

Netflix『リプリー』 エレガントなモノクロで描く 天才詐欺師の邪悪な野望

パトリシア・ハイスミスの小説『The talented Mr.Riply』を原作とするNetflixシリーズ『リプリー』。過去には、アラン・ドロン主演『太陽がいっぱい』(1960)やマット・ディモン主演『リプリー』(1999)で映画化されており、ドラマシリーズでの映像化は今回がはじめて。

1960年の初映像化から繰り返しリメイクされる本作の魅力は、なんといっても主人公トム・リプリーのミステリアスな人間性。
監督・脚本は、『シンドラーのリスト(1993)』でアカデミー賞脚色賞を受賞し、『アイリッシュマン』の脚本などでも知られるスティーヴン・ザイリアン。緻密で重厚なストーリーが得意なザイリアンの手腕で、一気見間違いなしの没入感が得られる作品になっています。

今回は、そんな『リプリー』のあらすじやキャスト、みどころについて解説していきます。

※本記事にはNetflixシリーズ『リプリー』のネタバレを含みます。

『リプリー』のあらすじ

『リプリー』のあらすじ

物語のはじまりは、1960年代のニューヨーク。定職に就かず、私文書偽造などの詐欺行為で生計を立てる男トム・リプリーは、ある日バーで私立探偵に声をかけられ、「船舶会社を経営する資産家グリーンリーフがあなたに会いたがっている」と伝えられます。

突然の依頼に戸惑いながらも、リプリーはグリーンリーフに会いにいくことに。グリーンリーフの要望は「イタリアにいる息子ディッキーをニューヨークに連れ戻す」というもの。渡航・滞在にかかる経費を支払うという好条件を提示され、リプリーはこの依頼を受けます。

リプリーは詐欺行為に関連した物品を処分し、ディッキーを探しにイタリアへ。少ない情報を元に、アマルフィ海岸のアトラーニにたどり着いたリプリーは、ビーチでディッキーと恋人のマージを見つけ、言葉巧みに二人に接触。不審に思われながらも二人との交流がはじまり、少しずつ仲を深めます。

当初は「ニューヨークに連れ戻す」という目的で二人に近づいていたリプリーでしたが、ディッキーの洗練された振る舞いや上流階級の魅惑的な暮らしぶりを体験する中で、ある邪悪な野望を抱くようになっていきます。

『リプリー』の主要な登場人物とキャスト

Netflixシリーズ『リプリー』の登場人物とキャストをご紹介します。

トム・リプリー(アンドリュー・スコット)

トム・リプリー(アンドリュー・スコット)

私文書偽造・小切手詐欺などを生業とする詐欺師。両親はボート事故で他界しており、ニューヨークで孤独に一人暮らしをする男。親切で社交的な側面と、神経質で冷徹、非情な一面を合わせもった特殊な人間性が特徴。グリーンリーフの依頼を受け、彼の息子のディッキーをニューヨークに連れ戻すためにイタリアに赴く。

ディッキー・グリーンリーフ(ジョニー・フリン)

ディッキー・グリーンリーフ(ジョニー・フリン)

グリーンリーフの息子。イタリア、アマルフィ海岸のリゾート地アラトーニで、画家を志しながら、恋人のマージや友人のフレディと悠々自適な上流階級の暮らしを送っている。優しく細かいことを気にしないおおらかな性格で、誰からも好かれる好青年。

マージ・シャーウッド(ダコタ・ファニング)

マージ・シャーウッド(ダコタ・ファニング)

小説家を目指すディッキーの恋人。リプリーを快く受け入れたディッキーに対して、当初からリプリーに不信感を抱いている。文学への深い造詣や丁寧なアドバイスに感心し、一度はリプリーを友人として受け入れるが……。

フレディ・マイルズ(エリオット・サムナー)

フレディ・マイルズ(エリオット・サムナー)

ディッキーの裕福な友人。劇作家として活動する知的で聡明な人物。詐欺師時代のリプリーと面識があり、本人にそれを問いただすも否定される。

『リプリー』のみどころ

エレガントなモノクロの映像美

エレガントなモノクロの映像美

本作の撮影監督は、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)』でアカデミー賞撮影賞を受賞したロバート・エルスウィット。物語に説得力を持たせる重厚な映像表現が評価されるエルスウィットの手腕は、本作でも遺憾なく発揮されています。

映画版では、趣のあるイタリアの街並みや地中海の雄大な自然をカラーによって瑞々しく演出していましたが、本作では全編をモノクロでエレガントに表現。地中海のリゾートで過ごすイタリアの上流階級の暮らしや、美しいイタリアの街並みが艶っぽく描かれています。

また、モノクロの世界に浮かぶリプリーの表情も見どころのひとつ。全編に渡って展開される不穏で不気味な絵作りは、リプリーのミステリアスな魅力をさらに際立てています。

アンドリュー・スコットの演技力

アンドリュー・スコットの演技力

トム・リプリーを演じたアンドリュー・スコットの演技も、本作の魅力のひとつといえるでしょう。特に際立つのは、強い執着心や想像を絶するような猟奇的でサイコパス的な一面と、豊かな感受性や優しい一面を見事に両立させている点です。

象徴的なのは、酒場でミーナ・マッツィーニの「しあわせがいっぱい」を聞いて涙を流すシーンやカラヴァッジョの絵画に興味を示すシーン。サイコパスというと共感性が欠如したモンスターのように演出されることが多いですが、リプリーには人間らしい一面があることが随所で描かれています。

リプリーは狡猾な詐欺師で、上流階級の暮らしを乗っ取るためにディッキーの殺人を企てる異常な犯罪者ですが、どこか親近感を持ってしまうのは、このような彼の二面性によるところが大きいでしょう。アンドリュー・スコットは、そんな複雑な二面性を抱えたリプリーを見事に演じ切っています。

ドラマシリーズオリジナルのカラヴァッジオを巡るプロット

ドラマシリーズオリジナルのカラヴァッジオを巡るプロット

リプリーがイタリアの画家、カラヴァッジオに心酔していく描写は、過去の映画にはないドラマシリーズだけのオリジナルプロットです。カラヴァッジオは、16世紀にローマで活躍した画家で、あまりに素行が悪く、ついには殺人を犯してしまった人物として有名。その後、カラヴァッジオはローマから逃亡し、ナポリ、マルタ、シチリアと各地を転々としながら作品を作り続けます。

ディッキーが敬愛するカラヴァッジオに出合い、その後、カラヴァッジオの人生を追いかけるように自身も数奇な人生を巡るリプリー。カラヴァッジオへの心酔は、リプリーの人間性に深みを与えているのはもちろん、ストーリーに歴史や芸術といった重層的な意味合いを持たせることに成功しています。

自然と犯罪者の肩を持ってしまう巧みなプロット

自然と犯罪者の肩を持ってしまう巧みなプロット

「ディッキーをニューヨークに連れ戻す」という依頼を受けてイタリアに渡ったリプリーですが、ディッキーとの交流を経て、目的がどんどんとすり替わっていきます。果てには「ディッキーに成り代わって上流階級の暮らしを謳歌する」という、すぐにもバレそうな発想に至るのですが、リプリーは巧みな話術と嘘で周囲を欺き続けていきます。

嘘に嘘を重ねながらストーリーが展開されていく中で、物語を追うごとに「リプリーの嘘がバレないように願う自分」に気づくかもしれません。本来は非難すべき犯罪者側に感情移入してしまい、最後の最後までハラハラが持続するのが本作の魅力のひとつといえるでしょう。

ディッキーへの感情は憎しみか愛か

ディッキーへの感情は憎しみか愛か

「リプリーは同性愛者なのではないかといぶかしむマージ」「裸になりディッキーの衣類を身に付けて喜ぶリプリー」など、物語の中ではリプリーのディッキーへの複雑な感情や行動が髄所に描かれています。

ストレートに本作を読み解くと、「リプリーは上流階級の暮らしを手に入れるためにディッキーに手をつけた」と考えられますが、よくよく見ると「憧れの人に近づくだけでは飽き足らず、本人そのものになりたい」といった、歪んだ愛憎がリプリーを突き動かしているようにも考えられます。

リプリーの真なる目的を考察しながら本作を鑑賞すると、また違った物語が浮かび上がってくるかもしれません。

まとめ

Netflixシリーズ『リプリー』は、パトリシア・ハイスミスの小説『The talented Mr.Reply』を原作とする作品です。モノクロの美しい映像美、最後の最後までハラハラさせられる巧みなプロット、複雑な感情を抱えたリプリーの特異な人間性など、みどころが満載。ミステリー・サスペンス・スリラーなどがお好きな方は、ぜひ一度視聴してみてください。

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