丁寧な料理の描写、食欲をそそる食事シーン、そして日常に寄り添うエピソードが魅力的なことから、料理を題材にしたドラマや映画が人気を集めています。2023年に独占配信されたNetflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』、人間ドラマが心に沁みる『深夜食堂』シリーズ、堺雅人をはじめ実力派俳優が個性豊かなキャラクターを演じる『南極料理人』などなど、Netflixオリジナルを含むおすすめの料理ドラマ・料理映画7選を紹介します。
目次
Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』
『舞妓さんちのまかないさん』は、是枝裕和監督による初のNetflixシリーズで、2023年1月に独占配信スタートしました。小山愛子による同名コミックが原作で、2021年にはアニメ化もされた人気作品を森七菜と出口夏希のW主演で実写化しました。
主人公は青森で生まれ育った幼馴染同士の「キヨ」と「すみれ」。2人は中学卒業後、舞妓さんになるために一緒に京都へ移り住みます。屋形に住み込みながら修行に励みますが、キヨは舞妓には向いていないと言われて、田舎に帰るように告げられます。しかし、屋形で暮らす人たちの食事を作る「まかないさん」になることに。一方で、すみれは”百年にひとりの逸材”と称されながら舞妓としての才能を開花させていきます。
『舞妓さんちのまかないさん』で登場する料理は、親子丼、ナスの煮浸し、うどん、クリームシチューなど、どれも一般的な家庭料理です。舞妓さんたちは10代で、みんな地元を離れて住み込み修行中。ほっこりとした食卓が厳しい毎日の中での大切な楽しみなのです。共同生活を送る中でワイワイと食卓を囲むシーンや、青森での家族のシーンなども、作品に彩りを添えて心があたたまります。
登場する料理がどれも美味しそうなのはもちろんですが、祇園の芸舞妓さんたちの暮らしを垣間見れるところや、美しい京都の風景が楽しめるのも本作の魅力です。また、屋形の女将である梓（常盤貴子）、先代女将の千代（松坂慶子）、先輩芸妓の百子（橋本愛）、出戻り芸妓の吉乃（松岡茉優） など脇を固めるキャラクターとそれらを演じる実力派の俳優陣も見どころとなっています。あたたかい料理や京都の風景を通して、主人公2人の清らかさと周りの人々の優しさが描かれる美しい作品です。
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Netflixシリーズ『深夜食堂: Tokyo Stories』
『深夜食堂: Tokyo Stories』はNetflixオリジナルシリーズの作品で、安倍夜郎によるコミック『深夜食堂』を原作とした実写ドラマです。現在はシーズン2まで独占配信中。
繁華街の裏通りにある「めしや」と書かれた暖簾がかけられた、通称「深夜食堂」を舞台に訪れた人たちの人生が交差します。店内に書かれたメニューは、豚汁定食、ビール、酒、焼酎のみ。あとは「できるものはなんでも」作ってくれるというスタイル。寡黙で心優しいマスター（小林薫）が作る料理は、どれもあたたかく心安らぐものばかりです。
お客さんが思い思いに注文するので、大の大人が「焼きそばパン」や「アメリカンドッグ」にはしゃいだり、「タンメンの麺抜き」や「ラーメンにカレーを乗っけたカレーラーメン」などオリジナルの食べ方が飛び出したりするのは、この作品ならではでしょう。また、『深夜食堂: Tokyo Stories』では、『ごちそうさん』や『かもめ食堂』、後述する『南極料理人』など、著名なグルメ映画・グルメドラマでも活躍するフードスタイリストの飯島奈美が料理を手がけているので、“美味しそう度”は段違いです。
さまざまな背景の人たちがマスターの料理を通して集い、同じ時間を過ごして織り成す人間ドラマの数々。しみじみとした人情ストーリーを1話完結で楽しむことができます。さらに、準レギュラーとして松重豊やオダギリジョー、各話のゲストで岡田義徳、風間トオルなど個性豊かな俳優陣が登場するのも見逃せないポイントです。
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『きのう何食べた？』（ドラマ）
『きのう何食べた？』は、よしながふみの人気コミックが原作の2019年に放送されたテレビドラマです。弁護士の筧史朗（西島秀俊）と美容師の矢吹賢二（内野聖陽）は同棲中のカップル。何気ない毎日の食事風景を通して2人の日常が描かれます。
料理担当は“シロさん”こと筧史朗。彼が作る料理は「鮭とゴボウの炊き込みごはん」「ツナとトマトのぶっかけそうめん」など家庭で真似したくなるようなメニューばかりです。食費を月2万5000円でやりくりするためにスーパーの特売品に目を光らせたり、冷蔵庫にある食材を効率よく使い切るためにメニューを考えたりするシーンは、一家の食卓を切り盛りする人や自炊をしている人には共感できることでしょう。家路につきながらスーパーで買い出し、帰宅後は流れるように素早く料理し、賢二の帰宅時間に合わせて料理を完成させる……シロさんの鮮やかな手際の良さは、見ていて大変気持ちが良いものです。
クリスマスには「ラザニア」と「鶏肉の香草パン粉焼きに明太子サワークリームディップ」というメニューが登場したり、史郎が留守のときは賢二が1人でウキウキと「濃厚バター味噌ラーメン」を作ったりと、特別なこだわりメニューとエピソードが語られる回も見どころです。また、2人の親や友人カップルなどが登場する回では、同性カップルならではの悩みに触れるなど、家族のありかたも丁寧に描かれています。日常を描く上で欠かせない料理と食卓を通して、温かく人間味のある2人の暮らしが描かれる良作です。
Netflixシリーズ『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』
『イルタ・スキャンダル 〜恋は特訓コースで〜』は、2023年1月にスタートした、Netflixで独占配信中の韓国ドラマです。監督はユ・ジェウォン、脚本はヤン・ヒスンという韓国ドラマの強力タッグ。主演は、『シークレット・サンシャイン』でカンヌ国際映画の主演女優賞を受賞したチョン・ドヨン。そして、『もう一度ハッピーエンディング』『賢い医師生活』など、ヒューマンドラマからラブコメまでさまざまな作品に出演するチョン・ギョンホが塾のカリスマ数学講師を演じます。
舞台は韓国の私教育のホットスポットである江南（カンナム）の塾街。カリスマ的人気を誇る塾講師のチェ・チヨル（チョン・ギョンホ）と、惣菜店「韓国代表 総菜店」を営むナム・ヘンソン（チョン・ドヨン）が、最悪な出会いを経て関わっていくことから物語が展開していきます。チヨルは過去のトラウマにより摂食障害を抱えていて、まともに食事ができなかったのですが、偶然口にした「韓国代表 総菜店」のお惣菜だけは食べられることがわかり、こっそり店に通おうとします。
たっぷり仕込まれたキムチや、小皿がたくさん並ぶ定食、アワビ粥などがストーリーの端々に登場。チヨルが美味しそうに黙々と食べるシーンから、SNSでは、「見ていると韓国料理が食べたくなる！」という声が上がっています。
主人公2人の恋愛模様を中心に描かれますが、チヨルのカリスマ的人気ぶりや教育ママたちの様子がコミカルに描かれる一方で、シリアスな事件が発生してサスペンス要素もあるという見応えたっぷりのドラマです。
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『南極料理人』（映画）
『南極料理人』は2009年に公開された、堺雅人主演の邦画作品。実際に南極観測隊員の調理担当の1人として参加した、西村淳の著書『面白南極料理人』と『面白南極料理人 笑う食卓』が原作です。
舞台は1997年の南極、標高3,810メートル、年間平均気温はマイナス54度以下という環境にある「ドームふじ基地」。ペンギンもアザラシも、ウイルスさえもいない環境にいるのは、約1年間の調査活動を行う8人の南極観測隊員たち。調理担当の西村（堺雅人）を中心に、8人の男たちのちょっと笑えてほっこりする奮闘ぶりを描きます。
調理担当の西村は、食糧はおろか水すらも限られているなかで、隊員たちの食事を苦心しながら料理します。毎日の食事はごく一般的な和食ですが、どれも丁寧に作られたものばかり。そんななかで、前期隊員が残した伊勢海老に色めき立ったり、雪原にかき氷シロップを垂らして食べてみたり、「蟹ならたくさんあります」と朝から豪快に蟹が振る舞われたり、南極らしい非日常を感じさせるシーンも数多くあります。
普通の環境なら難なく作れるメニューでも、南極では完成させるのも一苦労。隊員たちの希望になんとか応えようと頑張る西村の悪戦苦闘ぶりが、笑いを誘いながらもあたたかい気持ちにさせてくれます。
キャストは、ラーメン好きの気象学者“タイチョー”をきたろう、濃いめの味付けが好きな雪氷学者の“本さん”を生瀬勝久、お酒好きの医者“ドクター”を豊原功補、遠距離恋愛中の大学院生の“兄（にい）やん”を高良健吾が演じていて、キャラクターもそれを演じる俳優陣も個性的な面々です。「おいしいごはんをみんなで食べる」ということが、いかに幸せで、元気が出ることなのかを伝えてくれる素敵な作品です。
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』（映画）
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は2014年に製作された映画で、『アイアンマン』の監督であるジョン・ファヴローが、監督・脚本・製作・主演の4役を務めた作品です。同じく『アイアンマン』シリーズ主演のロバート・ダウニー・Jr.や、『アイアンマン2』や『アベンジャーズ』に出演したスカーレット・ヨハンソン、数々の名作に出演してきたダスティン・ホフマンなど豪華ハリウッドスターたちが出演しています。
一流レストランでシェフを務めていた主人公カール（ジョン・ファヴロー）は、人気料理評論家とSNS上で大喧嘩をした上、レストランのオーナーとも揉めて仕事を失います。そんなときに元妻イネズ（ソフィア・ベルガラ）の提案で訪れたマイアミで「キューバサンドイッチ」に出会い、その美味しさに魅了されてフードトラックで移動販売をすることに。息子のパーシー（エムジェイ・アンソニー）と、元同僚で相棒のマーティン（ジョン・レグイザモ）と一緒に、ニューオリンズ、オースティン、そしてロサンゼルスに向かってアメリカを横断していきます。
「キューバサンドイッチ」はあまり日本では馴染みがないですが、細長いキューバンブレッドに隅々までマスタードを塗り、ハムとローストポーク、チーズ、ピクルスを挟み、たっぷりバターを塗って熱々の鉄板でプレスして焼き上げる……そして、パンがこんがりしてチーズがとろけたら出来上がり！ レシピを聞いただけでも、なんとも美味しそう。キューバサンドを男3人で売り歩き、BGMは陽気なラテンミュージック、背景は気持ちの良いアメリカの風景、観ていると自然と気分は上向きになるでしょう。家族愛や友情を感じられて、あたたかくハッピーな気持ちになれるロードムービーです。
『ザッツ・アモール！』（映画）
『ザッツ・アモール！』は、『カリフォルニア・クリスマス ～街の灯に包まれて～』などのショーン・ポール・ピッチニーノ監督が手がけるラブコメ映画。
主人公のソフィアは30歳の誕生日直前に仕事をクビになり、帰宅すると同棲中の彼氏の浮気現場に遭遇。さらに、怒って部屋を飛び出した拍子に階段から落ちて足を骨折するという散々すぎる状況に。仕事も恋人も家も失い、実家に帰って再出発の準備を始めます。そんなときに母親の勧めで通い始めた料理教室で、スペインからやってきたシェフとの出会いが。2人は、料理や食事を通して互いに惹かれ合っていきます。
チャーミングな魅力と強い意志を持った主人公ソフィアを演じるのはライリー・ダンディ、優しいシェフのマティアスをアイザック・ゴンザレス・ロッシが演じます。
気軽に楽しめて、明るい気持ちになれる王道ラブコメ映画で、登場するスペイン料理がさらに気分を盛り上げてくれます。舞台が料理教室なのでメニューの説明が詳細かつ美味しそうなのも見どころです。大きいパエリアが出てくるシーンは、テンション急上昇間違いなし！
「スペイン人は遊び人」と警戒しながら可愛いワンピースに身を包んで出かけていくソフィア、「料理は喜び」と真摯に仕事に向き合うマティアス、そんな2人が魅力的な作品です。また、ソフィアの母親もおせっかいながら優しい性格で、安心感を与えてくれます。恋の予感と、それが膨らんで、互いの気持ちが近づく過程がテンポ良く描かれた作品です。
まとめ
Netflixで視聴できる、料理を題材にしたドラマと映画を7つ紹介しました。どの作品も、美味しい料理、食欲をそそる食事シーン、それらを通して描かれる人間ドラマが魅力的です。気になった作品をぜひチェックしてみてください。
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