手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』の人気エピソード『地上最大のロボット』を、浦沢直樹がリメイクした『PLUTO』がNetflixシリーズとして2023年10月26日より配信開始。
未来のロボット社会を舞台に人間の倫理とアイデンティティを探求する物語。AIやロボット技術が発展してきた今だからこそ、観終わった後に深く考えさせられるストーリーに仕上がっています。今回はそんな作品の魅力を紹介します。
『PLUTO』のあらすじ
『PLUTO』の舞台は、人間とロボットがともに生活する未来の世界。ヨーロッパ警察のロボット刑事ゲジヒトは、世界各国を代表する「7大ロボット」を狙う連続破壊事件の捜査を担当していた。事件解明に奔走する中、人間とロボットの関係やアイデンティティと倫理について深く考えさせられる出来事に遭遇する。
未知の敵との対決を通じて、ゲジヒトは人間らしさとは何か、そしてロボットと人間の共存の可能性について考えさせられる。
『PLUTO』の登場人物・キャスト
ゲジヒト(声:藤 真秀)
ユーロポールの特別捜査官であるロボット刑事。身体はゼロニウム合金で作られており、警察用の特殊武器や高度な操作装置を内蔵している。第39次中央アジア紛争時にテロリスト殲滅作戦に参加。世界で7人の世界最高水準のロボットに数えられている。
アトム(声:日笠陽子)
高度な人工知能を有しており、豊かな感受性を持つ世界最高水準のロボットの1人。天才ロボット学者である天馬博士が生み出し、現在は日本が所有。高い戦闘能力も持ち合わせており、第39次中央アジア紛争時には、平和の象徴や戦後復興の使者として参加した。
人間の気持ちを理解したいと考え、人間の子供と同じ行動を繰り返すうちに、その気持ちを理解しはじめている。
モンブラン(声:安元洋貴)
スイスで森林保護を担当。「人間やロボットの勝手で自然を壊すことはできない」と語るなど、自然を愛する温厚なロボット。第39次中央アジア紛争に参加した世界最高水準のロボットの1人。
世界7大ロボットを狙った連続破壊事件2人目の被害者となる。アルプスの山岳ガイドや遭難者の救助などにも積極的で、追悼式にはボランティアで参加してくれる人間もたくさんいた。
ノース2号(声:山寺宏一)
世界最高水準のロボットの1人に数えられている戦闘ロボット。元はプリテン軍に所属していたが、二度と戦場に立ちたくないと退団を決意した。
現在はスコットランドの作曲家であるポール・ダンカンの執事をしており、ダンカンの憂いと自分の悩みを重ね、ダンカンのためになりたいと願う。またピアノがうまくなりたいとダンカンに懇願し、「少しはうまくなった」とダンカンからほめられるほどに。
ブランド(声:木内秀信)
トルコが誇るロボット格闘技のチャンピオン。世界最高水準のロボットの1人で、おおらかで豪快な性格。妻と5人の子供と暮らしており、ヘラクレスとは良きライバルとして接している。
ヘラクレス(声:小山力也)
ギリシアの国民的英雄。ロボット格闘技界では「闘神」の名で畏怖される世界最高水準のロボットの1人。自分を「機械」であると言い切るほどのストイックなプログラミングがされているが、人間と触れ合ううちに憎しみやいたわりを理解するようになってきた。
エプシロン(声:宮野真守)
オーストラリアが産んだ世界最高水準のロボットの1人。7大ロボットの中では唯一、第39次中央アジア紛争への参加を拒否し、世界各国の戦災孤児を育てながら平和な日常を送っている。
ウラン(声:鈴木みのり)
科学技術庁長官であるお茶の水博士が、アトムの妹として作った少女型ロボット。対象の感情を感じられる共感性を有している。
プルートゥ(声:関 俊彦)
二本の角を持つ巨大ロボット。竜巻を起こしながら飛来してくる謎の存在。
『PLUTO』の見どころ。深いテーマとサスペンス
人間とロボットの共存は成り立つのか
『PLUTO』は、人間とロボットが共に生活する未来の世界が舞台。ロボットは人間と同等の知性を持ち、人間社会に溶け込んで生活しています。
一方人間はロボット肯定派と否定派がおり、それぞれの価値観でロボットと接しています。
第1話で登場する作曲家のポール・ダンカンは、否定派の人間。ノース2号がピアノを弾こうとすると、「触るな!」と激怒します。しかしノース2号の助力もあり、ロボットに対しての価値観が変わっていきます。
ロボットは芸術を理解することができるのか……。少し頑固な作曲家ダンカンが悩むのは、普通の人よりも高い次元で思うところがあったのだと考えられます。
それでも自分のトラウマをノース2号と一緒に乗り越えることで、ロボットの存在も認めることができました。
人が誰かを信頼するのは、相手がロボットであっても人であっても同じことかもしれません。どれだけ相手のことを想っているのか……。
人間であってもロボットであっても何かを考えており、それを表現することができるのであれば、垣根はいらないのかもしれない。「ロボットだから」と否定するのではなく、そのアイデンティティをしっかり理解する。それが共存につながる一番の近道なのかもしれません。
複雑でサスペンスフルなミステリーの展開
本作の主人公であるゲジヒトは、ヨーロッパ警察ユーロポールの刑事。担当はロボットと人間のいざこざから発生した事件で、世界の7大ロボットが何者かによって破壊される連続事件を解決する使命を受けます。
ゲジヒト自身が連続事件のターゲットとされている世界7大ロボットの一人。犯人を追うと同時に追われているのです。この世界のロボットは人間を傷つけることはできませんが、犯人はロボットかもしれない。それが人間に命令されているのか、自分の意志なのか。ストーリーが進むにつれ、次々と明かされていく真相に、ハラハラが止まりません。
劇的なキャラクターの成長物語
世界の7大ロボットはそれぞれのロボットに個性、人間のような自我や葛藤があります。特にアトムは、ゲジヒトとともに捜査に参加するなかで、ロボットについて深く考えるようになります。好戦的ではなく、できるならば武力行使なしで解決したいアトムですが、他のロボットや関わった人間のことを思い、自分たちを狙う嵐に飛び込む覚悟を決めます。
アトム自身の成長は、見ていて勇気を与えてくれます。もし自分が同じ立場であれば、同じ行動をとれるのか……。優しい性格で人間のことを理解しようと努力しているからこそ、強大な力を持っていることへの葛藤もあったのだと思います。
『PLUTO』は『鉄腕アトム』を元にしていますが、それとは違った「アトム」の成長を見られるのが楽しみすぎます!
まとめ
「人間とロボットの共存」というこれからの世界で考えていかなければならないテーマを劇的な物語展開を通じて考えさせられる『PLUTO』。あの頃、手塚治虫氏が考えていた未来のロボット社会とは何なのか、それを浦沢直樹氏の解釈の元に展開されたストーリーは感動のほか、心に杭のように突き刺さる何かが隠されています。
さあ、『PLUTO』の世界に足を踏み入れて、未来の可能性と人間の存在について考えてみませんか?
今回の記事は「eo光チャンネル」で放送中の番組『Netflix Freaks』の連動企画。こちらの動画も合わせてご覧ください!
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