『イカゲーム3』をネタバレ考察。勝者と、その意味は?

『イカゲーム3』をネタバレ考察。勝者と、その意味は?

2025年6月27日からシーズン3が配信されたNetflix『イカゲーム』。全世界で大ブームとなった人気シリーズも、これで最後。公開3日間でシーズン3は6,010万回再生され、同期間の最多試聴回数の記録を更新しました。この記事では『イカゲーム』シーズン1~2までのおさらいをしつつ、シーズン3の内容を振り返りながら改めて『イカゲーム』とは何だったのか、考察します。

※この記事は『イカゲーム』シーズン1~3のネタバレを含みます。

『イカゲーム』シーズン1~2のあらすじをおさらい

シーズン1・2とシーズン3の『イカゲーム』のあらすじを紹介します。

シーズン1

多額の借金を抱えた人々が絶海の孤島に集められ、賞金456億ウォン(約45億円)をかけた命がけのサバイバルゲームに挑むことに。主人公のソン・ギフン(456番/イ・ジョンジェ)もその一人。幼なじみのチョ・サンウ(218番/パク・ヘス)など、さまざまな背景を持つ参加者との出会い・裏切りを経験しながら、昔遊びがモチーフのデスゲームを勝ち抜いていく。不本意ながらもサンウとの死闘を経て最後に勝ち残ったギフンだったが、大金と引き換えに多くのものを失う。
実は参加者は観覧するVIPを楽しませるために命を捧げていた……その事実を知ったギフンは怒りに震える。一方、行方不明の兄を追う刑事ファン・ジュノ(ウィ・ハジュン)はフロントマンの正体を知るも、銃撃されて海に落ちる。

シーズン2

シーズン1の3年後、優勝賞金を手にしたギフンはゲームの主催者への復讐を決意。賞金を使って武器を購入。チームを率いて「めんこ」でゲームへの参加者を集めるスカウトマン(コン・ユ)を見つけ、自ら再びゲームに戻って運営組織を内部から潰そうと奮闘。
一方、ファン・ジュノはパク船長(パク・ヨンギル)によって救出され、チームを組んでゲームの真相に迫ろうとする。
新しく導入された投票システムで参加者に真実を告げゲームをやめさせようとするギフンだったが、不審がられうまくいかない。そんな中フロントマン(イ・ビョンホン)は驚くべき方法でギフンの覚悟を試す。
やがてギフンは仲間を集め直接的に武力で制圧しようとするが……。

※今までの出演者や元ネタとなった韓国の遊び「イカゲーム」については下記の記事を参照ください。

・関連記事:『イカゲーム』1&2のあらすじ・登場人物をネタバレあり/なしで解説 | Netflix Freaks

『イカゲーム』シーズン3のあらすじまとめ

『イカゲーム』シーズン3のあらすじまとめ

ゲーム首謀者への反乱に失敗し、親友チョンべ(390番/イ・ソファン)を目の前で失ったギフンは無気力状態になりゲーム継続の投票も棄権扱いになる。人間の善性を信じられなくなったギフンはクーデター失敗の一因をデホ(388番/カン・ハヌル)がつくったと知り私怨を抱く。
今まで絆をつくった参加者たちが次々に脱落していく中、ゲームの最中にジュニ(222番/チョ・ユリ)が赤ん坊を産む。新生児の父でもあるミョンギ(333番/イム・シワン)と激闘を繰り広げ、最終的にギフンは、自らの命と引き換えに赤ちゃんを救う選択をする。最後は赤ん坊が唯一の生存者としてゲームを終える。

『イカゲーム』が『イカゲーム』自体を風刺?

『イカゲーム』が『イカゲーム』自体を風刺?

『イカゲーム』シーズン3では、妊婦のジュニ(222番)、トランスジェンダー女性のヒョンジュ(120番/パク・ソンフン)、パク・クムジャ(007番/カン・エシム)とヨンシク(149番/ヤン・ドングン)の母・息子が次々に脱落して(亡くなって)いきます。これらの参加者は少なくとも善人寄りに描かれ、シーズン2からギフンとも比較的親密で、視聴者としても思い入れのあるキャラクターです。最後まで残ってギフンと死闘を演じるのを観るのもつらいですが、早めの脱落も悲しい。マイノリティーが早めに脱落していくわけです。

『イカゲーム』が『イカゲーム』自体を風刺?

そうして見せつけられる最終ゲームが「天空イカゲーム」。「○△□」の柱の上から1人「以上」脱落者を参加者で選び、落としていくという非情きわまりないルール。この第4ゲームが一番残酷で、「談合的な政治の老獪さ」を見せつけられます。
残ったメンバーはギフンとジュニの「222番」を継いだ赤ちゃん、ミョンギ(333番)、ミンス(125番/イ・デヴィッド)、年長者で100億ウォンの借金を持つイム・ジョンデ(100番/ソン・ヨンチャン)たち。残っているのは男性ばかり。

弱いものいじめを前提に、名ばかり民主主義の茶番が演じられていきます(完全に現代社会の風刺です)。

『イカゲーム』が『イカゲーム』自体を風刺?

ミョンギ(333番)が「僕が222番の父親だ」と告白したあと、VIPたちが「これって予想できた?」「まるで家族リアリティー番組だ」「今回はメンツが多彩だわ」と語るのはどこか
視聴者目線で、『イカゲーム』を取り巻く環境自体をも風刺しているかのようでした。

こう観ることもできる?主人公ギフンの動機とカタルシスの問題

『イカゲーム』はシーズン1~3までカタルシス(結末でのスッキリ感のようなもの)は少ない作品だといえるかもしれません。フロントマンやVIPをギャフンといわせる展開があったら、ここまで観た視聴者はスッキリしたことでしょう。あるいは、フロントマンの過去が描写されれば、彼の行動に理解が少しはできたかもしれない。さらにファン刑事が上陸できて、フロントマンと少なくとも対話できていれば……。

こう観ることもできる?主人公ギフンの動機とカタルシスの問題

『イカゲーム』は意図的にカタルシスを避けているかのように見えます。『イカゲーム』がやりたかったのは、そういった王道の展開への反発ではないでしょうか。

思い返せば、再び死と隣り合わせのイカゲームに自ら乗り込むこと自体が自殺行為であって、シーズン3でのギフンのラストは予想通りではありました。
「ゲームを止める」ことがシーズン2のギフンの行動原理。ただシーズン2から導入された投票で「×」を増やしてゲームの終了を狙うのには失敗。ほとんどギフンは空回りしています。
それならばと企てたクーデターも鎮圧されてしまい、親友や仲間を失う。ストライキでかつて仲間を死においやったトラウマが再来し、ギフンは「闇墜ち」しました。

こう観ることもできる?主人公ギフンの動機とカタルシスの問題

そこからクムジャにジュニと赤ちゃんを、ジュニに赤ちゃんを託され、「(見ず知らずの)子どもを守る」ことがギフンの行動原理になる。

最期にギフンはフロントマンやVIPに向けて「俺は馬じゃない。人間は……」とまで言って、自らが死に赤ちゃんに勝利を譲ります。これは「俺は馬じゃない。人間だ。だから知りたい。お前らの正体とそんなにも残虐な理由が」という、シーズン1のギフンのセリフに呼応しています。

VIPに中指を立てた行動であり、ある種「ぎゃふんと」言わせる(あ然とさせ、黙らせる)行動でした。

子どもだけが助かった。家父長制の資本主義から、第三の大人が子どもを育てる未来へ

子どもだけが助かった。家父長制の資本主義から、第三の大人が子どもを育てる未来へ

カタルシスが少ないとすれば、それは結局、VIPのような資本家が勝つゲームばかりの現実に対する皮肉が『イカゲーム』には込められているからではないかと思うのです。

赤ちゃんが勝利する。この結末こそ『イカゲーム』ファン・ドンヒョク監督の強いメッセージではないでしょうか。

『イカゲーム』では最終的に子どもたちが大金とささやかな幸せを手にします。
ジュニ(222番)とミョンギ(333番)の赤ちゃんがシーズン3の賞金を手にする。アメリカに渡ったギフンの娘はフロントマンから父の死を知らされ、シーズン1の賞金を受け継ぐ。絵描きのギョンソク(246番)の白血病の娘・ナヨンは快復し、ギョンソクを救った元北朝鮮兵のヨウルは娘に再会できるかもしれない。シーズン1で脱落したセビョクの弟・チョルは母親と再会する。

そこには「暴力」や「強い父親像」はありません。文字通り、ゲームの中で暴力を振るった男性たちはほとんど亡くなってしまいました。

ドンヒョク監督はNetflix公式メディア「Tudum」でギフンが犠牲になり赤ちゃんが勝つ最後について「私が伝えたかったメッセージは、目先の利益だけを追い求め、いかなる自制・犠牲・代償も拒絶し、知恵を絞らなければ、私たちに未来はないということです」と語っています。

参考記事:Tudum

子どもだけが助かった。家父長制の資本主義から、第三の大人が子どもを育てる未来へ

「222番」の赤ちゃんが最後、ファン・ジュノに預けられたのは、彼がフロントマンの弟だから、という理由もあるでしょうが「お金から一番縁遠かったから」ではないかと思いました。ジュノはお金を得る・借金を解消するためには「島」に行かなかったからです。

ギフンがそうしたように、ノウルが命を賭けてギョンソクと娘を救おうとしたように、ジュノが今度は222番の赤ちゃんを育てていく。血の繋がりのない、第三の大人が子どもの未来をつくる。韓国では「ママ虫(※)」なる言葉もあり、子どもやその親へのいわれなき批判が強くあります(日本でも)。こういった現状、そして家父長制の、今までの資本主義・民主主義社会へのドンヒョク監督による風刺が「父たちが死に、子どもが第三者の遺産を受け継ぐ」結末にあるように思います。

※育児をせず遊びまわる母親と主観的に侮蔑するネットスラング。チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)などより

子どもだけが助かった。家父長制の資本主義から、第三の大人が子どもを育てる未来へ

それでもゲームは続く。それはどうやったって胴元が勝つギャンブルのように、VIPたちが勝ち続けるゲームです。ただギフンが言っていたように、ゲームの賞金は参加者たちの命。それが生前どんな大人だったとしても、子どもにはお金として受け継がれていく。ギフンたちの命は未来に託されていきます。

まとめ

ちなみにシーズン3の最後に登場した、アメリカでメンコをしている女性(スカウトウーマン)は名優ケイト・ブランシェット。「何らかの続編(アメリカ版)の存在を示唆するものか?」と勘ぐってしまいますね。ドンヒョク監督はシーズン4の可能性を否定していますが……。

ついに最終シーズンを迎えた『イカゲーム』。またシーズン1から見返すと、さらなる発見があるかもしれません。この夏、『イカゲーム』を視聴して、あなたなりの考察に頭を張り巡らせてみてはいかがですか?!

Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン1~3独占配信中


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